「トウ」と読む字と「シ」と読む字の2字からなる熟語の組み合わせです。
この3つは どれも「トウシする」と言うことができる動作性名詞です。
凍
・投
・透
と、死
・資
・視
の それぞれで 同じ字はなく、形声字のパーツとして かぶるところもありません。
凍
は冫
+東
、透
は秀
+辶
、投
は扌
+殳
で、それぞれ構成されます。
東
は「トウ」の読みが意識されますが、秀
は「シュウ」であり音は直接関係がありません。殳
は「シュ」と読みますが、これが単独で使用されることは ほとんどなく、常用漢字でもなく一般的ではありません。
資
は次
+貝
で、視
(旧字:視︀
)は示
+見
から それぞれ成ります。この次
と示
は いづれも「シ」と「ジ」の両方の読みがありますが、どちらかというと「ジ」のほうがよく使われます。
死
・資
・視
の3つの組み合わせは “視覚”vs“資格”vs“死角”, “四角”, “刺客” でも衝突があり、どれかは 変更したほうが都合が良いでしょう。“視界”vs“死海”、“視力”vs“資力”、“資料”vs“死霊”、“資材”vs“死罪” なども衝突しています。
投
の字は、殳
が古代の戦で使う矛(ほこ)を表わして、それを投げたり振り回すこととされたりしますが、甲骨文字では扌
は豆
であったなど、いくつかの文字部分の混用や伝え間違えがあるようで由来がハッキリしていません。
近い字の役
(ヤク・エキ) や没
(ボツ) は それぞれ 音が大きく異なり、由来も異なります。投
に豆
が使われていれば別ですが、今の字形だと「トウ」の音に特別強くこだわる必要性がないことが導かれます。
中国語の読みを追うと、普通話では「タウ」(tou2)で、広東語でもほぼ変わりません。「トゥウ」「トゥオ」「タオ」あたりが今の表記では近いでしょう。タ行のカナは整合性がないのでどうしてもゥ
が混じって書きづらいですが、古い表記もみとめるなら「ツウ」(tuu)、「ツオ」(tuo)、「ヅオ」(duo)、「ヅウ」(duu) のようにツ
を使ってより簡単に書くことも可能です。
凍
は東
を音符として持つ形声字です。この東
の字は “広東省”(カントンショウ) などの語で日本でも比較的よく知られる「トン」との読み方も持っています。
凍
には “解凍”vs“解答”, “怪盗”, “快投” など、より厄介な衝突がありますが、東
と ともに「トン」に逃がすと比較的簡単で衝突を減らすことができます。東
は “頭部”vs“東部” や、“江東”vs“口頭” など こちらも多く衝突があり、いづれも有意です。
透
の字が「トウ」と読むのは日本古来の 呉音漢音ではなく、もっと後の時代に修正されたものとみられ、現代の中国の読みも「トウ」「タウ」のあたりになります。
この字は “浸透”vs“新党” や “透過”vs“投下”vs“糖化”vs“等価”、“透明”vs“党名” などいくつか衝突がありますが、もともと熟語の数が少ないので、あまり効果は高くありません。逆に言うと変更で影響が少ないということでもあります。
この場合、覚えやすさの観点で言えば、秀
の字の「シュウ」に寄せていくのが良さそうですが、そのままでは衝突の多さが解決できません。少しずらして「シュン」「ション」か、タ行に近いところなら「チョン」「ティウ」あたりに持っていくと重なることはないでしょう。
“透視” に関してはどちらかと言うと、視
を動かすほうが 効果が高いです。この字は同音衝突が生じやすい1音漢字の中で、単語にならない文字です ( 死
四
市
師
などは一字で単語として使われる)。常に熟語となることから、音を変更しても組になる字を頼りにして 推測が はたらきます。
偏の示
が音符なので、この読みのうち「ジ」を使って「トウジ」とすれば少なくとも “投資” や “凍死” とは衝突しませんが、「トウジ」と読む “当時” や “湯治” があり「当時する」のようになってしまって解決にはなりません。
近い音で「シェ」「チェ」、濁音で「ジェ」を用いると衝突が起きません。これは小さいェ
が 後から日本語の外来語表記に増えたことから漢字の読みとして使われておらず、有用な移住先です。
資
の字は通常「シ」としか読みませんが、上の 次
は “次回”(ジカイ) の「ジ」、“次第”(シダイ)の「シ」など清濁両方の読みがあります。同じ音符を持つ姿
では「シ」としか読まれません。中国語読みを頼ると資
は「ツー」(zi1)となりますが、音読みで「ツ」と読む字は津
くらいのため、これも有効でしょう。