促音の取り扱い

促音とは

促音とは 「つまる音」のことで、日本語では小さいまたはを使って表します。

実際には音というよりかは音楽の休符のようなもので「っ」そのものには音はなく、あるとすれば続く次の音が 軽いアクセントを付けて発音されることだけです。

以下に例を挙げます。

  • ぞっこう (続行)
  • かっさい (喝采)
  • ざったな (雑多な)
  • てっぱん (鉄板)

日本語として よく使われるのは上のような、ローマ字で言えば k s t p が後ろに続く語句で、このうちp は元の語句としては h (ハ行)となるものに、半濁点がついています。

前にある文字の漢字を見ると、それぞれゾク、カツ、ザツ、テツのように、元々が「ツ」である場合や「ク」である場合が多く、他に

  • いっぽん (一本)
  • きっきょう (吉凶)

上記のような「チ」が促音化する物もあります。

他の例としては

  • きっかいな (奇怪な)
  • おって (追っ手)
  • さっそく (早速)
  • のっぴき (退っ引き)
  • こっぱ (木っ端)
  • 〜って

上記のように「キカ」が「キッカ」となるなどもあります。これは子音の連続を強調した表現と見ることができます。“機会” など同音語と区別したり読み方を指示する意味はあっても、必ずしも書く必要はありません。

また「追う手」の「う」や、「さうそく」の「う」が「っ」に化けるものがあります。これは動詞の促音便と似ています。の字を「サッ」と読む これは動詞の活用ではない例外です。

促音便とは「行く」の古語「行きて」が「行って」、「寄る」の古語「寄りて」が「寄って」となったように、かつての江戸の言い回しが現代の標準語に引き継がれたものですが、これは元々は一種のナマリです。

名詞である “追っ手”なら “おいて”、“退っ引き“ は “のきひき” として連用形名詞から成る名詞熟語とすることも可能で、必ずしもは必要としません。

“こっぱ”(木っ端)の例は、他に “したっぱ”(下っ端) 、“はっぱ”(葉っ葉) 、”けっぱる”(気っ張る) など、続く語がハ行の場合で これを破裂音パ行に移行する場合の アクセントの意味合いがみられます。+が “ひび”(日々) となり連濁を生じるものの一種の分派と見られます。

通常 漢字熟語が連濁を生じる場合、漢字そのものに変化はなく、カナにした場合にのみ濁点が付きます。このような語句は漢字表記では “木端”のようにして の文字は省かれることがよくあり、カナにしても半濁点が使用可能な近代以降は 必須とは言えません。

“〜って” は口語表現で、一種のカギカッコと同等の記号のようなものを音声で表現したものと見ることができます。これも文章で書くときには “「〇〇」と言うと” のように記号を使用すればよく、やはりこれも必須のものではありません。

このように は 話し言葉に引きずられる形で 書き言葉に紛れ込んだ例も多く、表記の上では省略可能なものと見ることができます。これは日本語の訓読みで “取り消し” を “取消” と送り仮名が縮められるのと理屈は似ていますが、“行なう” を “行う” のように省きたがる送り仮名記述とカナでを発音に沿って積極的に書こうとするのは対照的です。

促音そのものに対応する音が あらかじめ文字内に埋められた漢字とは異なり、発音に従おうとするカナの世界では“間”(ま)の省略すらを許さず、表記の志向が対立しています。古典仮名遣いにおいて “てふ” と書いて「ちょう」と読むような組み合わせ技を用いていた時代から、音に基づいて字をつづる 表音主義への移行の

カタカナ語の促音

英語などの西欧由来の言葉には、音節が少なく強い音について、かなり独特な使われ方をしています。

  • up ・・・ アップ 
  • cup ・・・ カップ
  • apple ・・・ アップル
  • top ・・・ トップ
  • cap ・・・ キャップ
  • cash ・・・ キャッシュ
  • tissue ・・・ ティッシュ
  • net ・・・ ネット
  • hepburn ・・・ ヘップバーン(ヘボン)

英語での発音は日本語の「ッ」のように、明確に1拍をとるわけではないので、たとえば up ならアプと書いたとしても全く問題はないはずなのですが、この語はほぼ100%アップと書くことに決まっています。

Apple に対して「アップル」のケースは もっと ややこしくて、例えば同じ Appで始まる Application の略語を「アプリ」と日本では呼ぶことになっていますが、「アップリ」と言うことは皆無です。

Topも「トップ」と書きますが、Topic は「トピック」となり、「トッピック」とは 言いません。しかし Topping は 「トッピング」で、「トピング」とは言いません。

Capも「キャップ」ですがCapacityは「キャパシティ」で略すときは「キャッパ」ではなく「キャパ」と言われます。

子音の文字が2つ続けばが入るのかと言えばそうでもありません。 pattern は「パターン」、letter は「レター」と書かれます。pass は「パッス」ではなく「パス」です。

topic と top に ついて発音記号で見ると tάpɪk と tάp で、先頭部分に差はありません。したがってこれを日本語で書く際にもの有無をいちいち単語ごとに変える必要はないはずです。他の語でも何かアクセントにルールが有るかといえば かなり曖昧です。

このような発音と表記の不一致は、むしろ日本式英語(いわゆるJaplish)と呼ばれるような無用なナマリを刷り込んでしまう有害性も考えられます。

最後の hepburn は “ヘボン式ローマ字” の “ヘボン” ですが、この名前に関しては “ヘップバーン” だったり “ヘプバーン” だったり各所で表記が異なります。日本のローマ字の宗家でもある、その ご当人の名前が日本語で一定にならないわけです。

これには英語で つづった文字を見て読み方を考える表記主義と、音を聞いてそれに合う文字を考える表音主義の両派が日本語にあり、国内においてナマった発音がネイティブの発音よりも多く流通している現実があるためと考えられます。

ローマ字における促音

ローマ字では通常 後ろに続く子音を2つ重ねることによって促音を示します。

  • きっぷ ・・・ kippu
  • とっきゅう ・・・  tokkyuu (tokkyû)
  • ちょっと ・・・ tyotto (chotto)
  • せっかい ・・・ sekkai
    ※カッコ内は歴史的ヘボン表記

ヘボン式(hepburn style)では、英語に近い表記を好むので、英語の watch のように 続く文字が ch の時だけ 例外的に tchとなります。

  • こっち → kotchi (kocchi / kotti )
  • いっち → itchi (icchi / itti )
    カッコ内は日本式、ワープロ式、または99式ローマ字

この tch ルールは いくら英語っぽくてそれらしいとは言え、さすがに日本語の代書法としては変則的で不便です。

コンピュータでのローマ字入力の際は 同じ文字を連続することで「っ」を入力でき、この規則性が入力効率を高めます。

もとはと いえばtiではなくchiと書くヘボン式のせいで このような余計なルールが必要になるのですが、これは日本のタ行が壊れていることが原因なのでローマ字のせいではありません。

この項ではあくまで ローマ字の基本ルールとして、促音は tt、kk、ss のように、子音の同じ文字を連続させることで表すということだけ知っていれば良いです。

偽促音

ロシアの酒として日本でもよく知られている「ウォッカ」は、英語表記では「vodka」、ロシア語なら「водка」で、現代的なカタカナで書くとヴォトゥカ、ヴォートカとなるものです。

歴史的な事情でが使われていますが これはもともと促音ではありません。促音というルールができる以前の古い時代に日本に伝来したため、原語に近い発音を書こうとして使われていた書き方を、のちの日本人が読み間違えたものと考えられています。

このように普段 促音だと思っているものの中には、現代表記で正しくは「ツ」や「ト」と書かれるべき単語が混じっています。

語源の復元機能

日本語で「ッ」「っ」を促音として積極的に使用することになったのは昭和以降のことで、現代仮名遣いが広まって以降のことですが、よくよく見てみるとその使われ方は結構いい加減なものであることがわかります。

そもそも日本語でなぜ促音が必要になったのかと言えば、日本語に子音字で終わる発音がないためです。

英語で「and」という語句を日本人がカタカナ化すると 「アンド」となりますが、これをローマ字にすると「ando」と書くことになります。この様からもわかりますが、最後に o の母音を足さなければうまく発音できない(または聞き取れない)わけです。

日本人が1拍1拍の全ての発音に母音をつけるのは、はるか太古の昔に日本に移り住んだ語族一族が、寒冷な気候を乗り切るため できるだけ口を開けずに発音する技術が発達したという説があります。

子音で終わる語は西欧のものというわけではなく、古く中国語にも用いられていて入声(ニッショウ/ニュウセイ)と呼ばれますが、日本語の漢字熟語で促音が使われているものは多くが この 入声 に対応するものと言われています。

漢字熟語の「悪化(アッカ)」が ak-ka なのに対し、単独のの字を「アク=aku」とするのは、「ak」では日本人にはうまく発音できないので 最後に母音の u を付け足して1字のみでも発音可能としたと考えることができます。の字は広東語の拼音だとokと書き「オク」のように発音しながら末尾に母音はありません。“嫌悪”(ケンオ) や “悪寒”(オカン) に見られるように、「ク」の音の存在が語によって不安定です。

こうして漢字に戻って考えてみると、音が詰まって聞こえるからと言って、の一字で何でも表すのはいささか乱暴です。

元の字が ak-ka のときの場所はkなのであり、kuからuを取り除いたものです。つまりアッカというよりから母音の強さを除いて アㇰカなどと書いた方が、元の漢字に対して忠実です。

このように単独の漢字1字で書いた時のカナの最後の字を小書きにするやり方(末音小書き)は、いくつかのメリットがあります。

たとえばカナで 「ハッカ」と書く語の中には “発火” と “白化” の2つがあります。

単独での字はハツであるのに対し、の字はハクと読み書きします。ここに末音小書きを用いると、「発火」はハッカ、一方「白化」はハㇰカとなります。

この区別を行うようにすると、一番のメリットは漢字変換による衝突が減ることです。はっかは今だと “発火” “白化” “薄荷” がありますが、登場頻度の低い “薄荷” を除くと どちらかしかないので必ず1回で変換できるようになります。

またカナから元の漢字を推測しやすくなります。漢字変換をしないままで入力確定してもどちらの意味かが分かるのでそのままでも済ませられます。

発音では 文字に合わせてわずかに異なる発音をしないといけなくなりますが、単に「ツ」「ク」それぞれの音を弱く読むだけでも問題ありません。ハㇰカをハクカと読んでも意味がわからなくはならないからです。

他に「セッカイ」には “切開” と “石灰” とがありますが、元の字はそれぞれセツセキです。石灰については残念ながら小さい字がUnicodeに含まれないため、しばらくは代用として同じカ行のセㇰカイと書くしか無いかもしれません。幸い日本語に「セク」と音読みで発音する漢字は無いので そうしても衝突は生じません。

その他に今の日本語では説明のつかない語句も、小書き仮名を用いるとすっきりする場合があります。

例えば「合戦」は「カッセン」または「ガッセン」と読みますが、「フ」の小書き「ㇷ」を使って「カㇷセン」と書くと、旧仮名遣いでいう「カフ」の音との整合性が取れるようになります。

「ガッ」を大文字で「ガツ」としてしまうと「月(ガツ)」と区別できなくなるので、ハㇰカをハクカと読むことを容認するような方針とは矛盾します。したがって小書きで「ッ」を使うのは最適ではないということもあります。

の文字は「ガッ」で統一が取れているようですが、合体、合併、合奏、合致という色々な組み合わせがあり、これはgattai、gappei、gassou、gatchi(gacchi) のように、ローマ字にすると 「ッ」の部分がバラバラになります。

ですが最後の「合致」の場合に gatchi とするのが認められるのであれば、ガㇷタイ=gahtai、ガㇷペイ=gahpei、ガㇷソウ=gahsouとしても別に構わないはずです。

このような 漢字に対して固定の アルファベットを割り当てるのは、中国語で用いられる拼音入力(ピンイン入力)法と近いものがあります。

hakka だと 「発火」と「白化」、sekkaiだと「切開」と「石灰」の 意味が区別できない問題を考えると、それぞれに hatka 、 setkai のような書き方があっても良いでしょう。

小書きの入力

ここで使っている小さいカタカナは、「一ヶ所」のや「三ヵ月」のもあるのですが、他にUnicodeで規定されている文字に ㇷ゚ など多くあります。

実はこれらの音はアイヌ語仮名(またはアイヌ語片仮名)として 2000年に規定されたもので、江戸由来標準語では使用されない音をカタカナで書くことができるように拡張されたものです。

また台湾語をカタカナで書く際にも使用されます。

(これらの他に  なども含む小さい文字は「捨て仮名」と呼ばれることもありますが、その用法が少数民族言語の転写に用いられやすいことから、「捨て」の呼称は避け、「小書き文字」としておきます。)

日本語としてこれを入力しようにも入力の仕方に悩むところですが、パソコンでの入力の場合は入力ソフト(IME)の改良で実装は可能でしょう。

ローマ字入力であれば hakka と入力すれば ハㇰカ、hatkaと入力すれば ハッカ のように子音字に合わせるようにすれば良いですし、かな入力方式なら Shift+が入力できるのと同様に、Shift+が入力できれば特に苦痛はありません。(Google日本語入力ローマ字のマッピングを変更可能なIMEではカタカナにする分には現在でも入力は可能です。ただし辞書が対応していないので漢字変換できませんが..)

現在のローマ字入力だとxの後にアイウエオヤユヨを打てば小さくなりますが、スマートフォンなどでは「小」という専用キーがあり、このような操作が任意の字に使えれば有用でしょう。前の字を小文字にする異体字セレクタがあっても良いです。

仮にこのような拡張的な促音が認められるとしたらどうなるか、以下に具体的な代替表記例を示します。

  • 鉄砲(テッポウ) → テッポウ
  • 六甲(ロッコウ) → ロㇰコウ
  • 立項(リッコウ) → リッコウ
  • 陸閘(リッコウ) → リㇰコウ
  • 突起(トッキ)  → トッキ
  • 特記(トッキ)  → トㇰキ
  • 滑降(カッコウ) → カッコウ
  • 格好(カッコウ) → カㇰコウ
  • 昨今(サッコン) → サㇰコン
  • 着火(チャッカ) → チャㇰカ
  • 緑化(リョッカ) → リョㇰカ
  • 学校(ガッコウ) → ガㇰコウ
  • 合併(ガッペイ) → ガㇷペイ (ウの促音化はㇷとする)
  • 合羽(カッパ)  → カㇷパ  (ウの促音化はㇷとする)
  • 納豆(ナットウ) → ナㇷトウ (ウの促音化はㇷとする)
  • 早速(サッソク) → サㇷソク (ウの促音化はㇷとする)
  • 早急(サッキュウ) → サㇷキュウ (ウの促音化はㇷとする)
  • 石鹸(セッケン) → セㇰケン (キの小字が無いため)
  • 逸失(イッシツ) → イッシツ
  • 一室(イッシツ) → イチシツ/イㇱシツ (チに小字は無い)
  • 発行(ハッコウ) → ハッコウ
  • 薄幸(ハッコウ) → ハㇰコウ
  • 八紘(ハッコウ) → ハチコウ/ハㇱコウ (チに小字は無い)

“陸閘” などは現行でも「リクコウ」と「リッコウ」のどちらでも良い語ですが、“リㇰコウ” のカナづかいが認められるなら辞書でも1つに まとめられます。“緑化” も 「リョクカ」と「リョッカ」が “リョㇰカ” 1つで 済みます。

チについては chiと考えるか上代日本語解釈のtiとするかで所属させる段が変わってきますが、仮に大きな文字として読んでも聞き分けに問題がないという観点で言えばは有力な候補です。

これをにしてしまうとなどの区別ができないためです。のかわりにを使うことも考えられます。「ちゅんちゅん」鳴く“すずめ” は室町以前の古典で「しうしう」鳴く と記されることから はtsiの発音であったという推定もあり、漢字の読み仮名としては代用が利く文字とも考えられます。

英語など由来と考えられるものについては、もともと重ね字が無いものについてはを省いても問題ないでしょう。どうしても入れたい場合は後に続く子音の方に合わせるしかないですが、原語で別の子音字があるならそれに合わせるのが適切と考えられます。

  • 一般に促音を用いるもの(重ね字あり)
    • neck (ネック) → ネㇰク
    • back (バック) → バㇰク
    • click (クリック) → クリㇰク
    • check (チェック) → チェㇰク
    • catch (キャッチ) → キャッチ
    • deck (デッキ) → デㇰク
  • 一般に促音を用いるもの(重ね字なし)
    • bag (バッグ) → バグ/バェグ
    • debug (デバッグ) → デバグ
    • set (セット) → セト/セㇳ/セツ
    • head (ヘッド) → ヘド/ヘヅ/ヘㇳド
    • cap (キャップ) → キャプ/キァプ/ケャプ
    • cup (カップ) → カプ
    • ship (シップ) → シプ/シㇶプ
  • 一般に促音を用いない(重ね字あり)
    • little (リトル) → リトル/リットル/リㇳドル/リㇳドㇽ
    • rough (ラフ) → ラㇰフ/ラㇷフ
    • tough (タフ) → タㇰフ/タㇷフ
  • 不安定なもの
    • pepper (ペッパー) → ペㇷパー/ぺㇷ゚パー/ペパー
    • Hepburn (ヘボン) → ヘㇷ゚バン/ヘㇷ゚バーン/ヘㇷ゚バㇿン
  • その他
    • ラッパ (喇叭) → ラパ/ラㇷ゚パ
    • croquette/kroket(コロッケ) → コロㇰケ/コロケㇳ

ものによっては かなり違和感の強いものもありますが、“ネㇰク”(neck) や “バㇰク”(back) などは英語と並べた場合は 比較的うまく対応が取れているように見えます。ローマ字入力を用いる場合には ck にㇰkを割り当てれば 何の障害もありません。(通常 kk を用いるため)

shipの例も特殊ですが、「シップ」だと “湿布” のような日本語と衝突していることを考えると、カナの上で書き分けが効くのは有効です。ちょうど “景気”(ケイキ)と“ケーキ” が漢字変換時に衝突しないのと同じような効果が期待できます。cupも促音を用いないほうが“割賦”(カップ)と重ならず好都合です。

“ラㇰフ” とか “タㇷフ” は無理矢理な感じさえありますが、バッグ(bag) や セット(set) に現状が付いてることを見るとなぜ今まで何も付けなかったのかが不思議でもあり、整合性を取るなら考えうる組み合わせです。英語の場合、ローマ字やイタリア語などと違って、発音とスペルが必ずしも対応しないことが多いのでどちらに合わせるか難しいですが、ある程度のパターンは見いだせるでしょう。

コーヒーの英語 coffee が、フランス語で café (カフェ)、イタリア語で caffè (カㇷフェ)となったりするように、同じ語に対し各言語によって読みにも綴りにも揺らぎは よくあることで、必ずしも元の語の表記にこだわる必要はありません。

しかし現代的な単語の流通では、音声よりも先に外国語の文字表記のとおりにメディアから伝わり、機械的にカナに置き換えられて表記が定まっていくケースが多々あります。テレビもラジオも原稿や台本を読みながら伝える分には結局一度文字表記を通しています。

ヘタに耳で聞いて文字に転記する方法を探るとどうしても人による誤差が生じますから、外来語の元のスペルをなるべく維持するほうが表記のブレは生じにくいことが考えられます。

小書きカナの用法を規定する

このような新参の文字の使い方は、今ある体系を壊す厄介な代物であるとも考えられますが、放っておいても誰かが勝手に好きなように使うことは容易に想像がつきます。ちょうどアスキーアート(AA)や顔文字、絵文字が広がったのと同様に、新し物好きが自己表現の道具として使いたがるからです。

Twitterなどでアーティストなどが自分のニックネームなどに小書きカナを使っているケースはたくさんあり、放置すると独自ルールがネット方言として出回り、やがて互いに読みを理解できず、意思疎通が難しくなっていくでしょう。

であるならば、今ある諸言語のルールを日本語の側に取り込む形で、新しいカナの使い方の模範を1つ示すのは良いことと考えられます。