“水筒” は子どもから大人まで知っている 飲み物を持ち運ぶ道具のことを言う普通名詞で他の意味も読みの揺らぎもありません。
対する “出納” は 会社の経理や、銀行のようなところでよく使われる語で、“出納帳”(スイトウチョウ) のようないくつか固定的な熟語やコロケーションで現れます。
それ以外の業界の人には「シュツノウ」と文字通り読まれることが しばしばありますが、これは 誤読 であるとされることが時々あります。
納
の字は 自分が相手にお金を払う場合と、反対に受け取る場合と、両方の意味合いで使われるので意味があいまいです。物をしまうのとお金を管理するのは次元が異なるという考えもあります。
日本ではそういう語があると熟語によって読み分けて意味を区別する方法が時々 使われます。多くは たまたま略字が複数の文字で同字衝突したことによるものですが、この字はそれには当たりません。
近代的な中国語の普通話の読みとしてもna4(ナ↘︎)であり、広東語や韓国語にnap(つまり古語での ナフ )は有っても「トウ」は日本国内の慣用音に過ぎません。
「スイトウ」には 一般的な “水筒” や ほかに “水痘” “水稲” “膵島” のような 専門分野寄りの語が いくつかあるため、“出納” をそう読むと漢字変換の邪魔になり紛らわしいだけで、こだわってもメリットがありません。
取り扱う物による区別がしたければ 収支・資金・預金、在庫・資材 などの単語を加えればことは足りますから、素直に分かりやすく 漢字変換もしやすい「シュツノウ」が無難かつ未来志向でしょう。
あるいはどうしても別の読みが必要なら、古語「ナフ」の読みに影響された “納豆”(ナットウ)、“納屋”(ナヤ)、“納戸”(ナンド) などと合わせて「シュツナ」「シュツナン」「シュツナフ」のような読みを当てることが考えられます。