“死刑” と ”私刑” は ともに何か罪を犯した人に対して与える 刑 またはその行為をいう名詞です。
”私刑” は 刑務官や公的機関によるものではなく 一般の人が刑を与えることを言い、場合によっては違法行為になる場合もあるもので、否定的なニュアンスを込めて使用されることもあります。
“市警” は 自治体である市に属する警察組織の“市警察部”を言う略語です。
この中で 誰でも使う可能性がある単語は “死刑” くらいで、それも普通は口語で、わざわざ文字に起こすのは報道に関わる人物や物書き、その他は特定の業種でのみ使用される専門用語に類するでしょう。
私
と市
は このほかに “市立”と“私立” の対立があり、ここに死
の字が すべて「シ」の音で 重なっていることが問題です。中国語音では 私
si1(スー)、市
shi4(シイ↘︎)、死
si3(スウ⤻) のように それぞれ微妙に違いますが、日本語ではこれが重なるので、何かの別の漢字に続く熟語が生まれると常に危ういということです。
「シ」1字1拍の漢字は子
歯
氏
紙
師
士
史
司
詞
詩
使
など多数あり、「シー」のように伸ばさないままでは なおさらアクセントを付けることができず 不便を起こしやすいものです。
死
に関しては まず それ以外の読み方が 音読み 訓読み ともに当てようがなく、単独で名詞としても使用され、熟語の数も非常に多いことから変更が容易ではありません。これはそのままが妥当と考えられます。
市
に関して言えば これは “市場”(いちば) のような一般語と、行政区画としての 市 の2つの意味が有りますが、前者であれば訓読みの「イチ」で代用可能なことも多いです。
いっぽう後者に関しては「イチ」だと意味にズレがあって あまり適さないことがあります。“市立”は「イチリツ」と読んで区別しますが、“一律” という熟語もあるので入力には無力です。また “市民” や “市政” など音読みの熟語を そうは読みません。
かわりに英語で「シティ(city)」と訳されることからこれを少し崩したような形で訓とすることが考えられます。たとえば「シチ」「セチ」などです。無論「チ」の発音は「チーム(team)」同様 ti (ティ)のように読む人がいても許容されるでしょう。“市警” のような場面では「セチケイ」あるいは促音化して「セッケイ」とすることができ、この読みは比較的一般化しやすいでしょう。他は単純に伸ばして「シイ」も良いです。
私
は “使用”vs“私用” などでも衝突がありますが、訓読の「わたくし」で代用がある程度効きます。ただ、字数が多いのでやや入力には面倒です。私
を熟語に持つ “私市”(きさいち) “私部”(きさべ)などからとって、「キサ」あたりを慣用音として当てると ちょうど良い字数に収まります。
キサは “后”(きさき) に由来のある訓読みですが、「わたくしリツ」のような湯桶読みから見れば「キサケイ」でも大した障害にはならないでしょう。
音読みにこだわるなら現代中国普通話によせて「スー」「チー」のあたりが考えられます。ここで「スー」だと数
や崇
などいくつか重なるので、「チー」のほうか、「スッ」の促音、「スン」の撥音化した形が考えられます。
“私刑” と “死刑” でまず刑
が重なっているのでどうしてもどちらかの「シ」を動かす必要が生じますが、刑
や警
を動かすことももちろん考えられます。
このとき警
の字は驚
と同じく 敬
を音価とする会意形声字ですので、読みがそろっている方が分かりやすくなります。この驚
の字は “驚異的” などに見られるように基本「キョウ」の呉音のほうがよく使われるというズレがあります。ですから 警
の字に関しても漢音の「ケイ」ではなく呉音の「キョウ」、あるいは濁音化して「ギョウ」の読みを当てることが考えられます。
しかし「キョウ」も教
興
京
経
強
狂
など多くの字があるので あまり使いやすくはありません。業
行
仰
凝
暁
などがあるのでこちらでも同じです。
中国語から音を持ってきても「ジゥン」(jing3) だったりするので、ここも ほぼ同じ順
純
準
巡
など多くあり、そのままでは難しいものがあります。
その意味では日本語の母音変化の延長線か、過去から拾うか、かなづかいから見るのが良い可能性が高いです。
「ケイ」からなら「クェイ」「クウェイ」「キウェイ」、「キョウ」からなら「キャウ」「キオ」「ケオ」「クォウ」「クウォウ」「キョン」などが挙げられます。入力の利便からすれば「ケオ」「キオ」、中国音に少しでも近づけるなら「キョン」あたりが候補になるでしょう。
逆に刑
の方を操作するとしても同じで、こちらも「ケイ」「キョウ」がベースなので似たようなものです。ただし中国普通話を頼ると「シゥン」(xíng2)だというところが少し異なります。