いずれも「シ」と「ヨウ」の音を持つ2つの漢字の組み合わせです。
“使用” と “試用” と“私用” は用
の字が共通しているので、使
と試
と私
は音読みで別の音が必要になります。他はどちらかが違っていて他と重ならなければ良いと言うことになります。
用
の字の読みは基本は漢音のヨウがつかわれ、呉音でユウの音もあります。ユウと読む熟語は現代の日本語に無いですが、これを一部に持つ涌
や、勇
とも同じもので、音はこれらと共通しています。
「用がある」「用が足りる」「用を成す」など1文字だけでも名詞としてよく使われる漢字で定着度が極めて高く、熟語も非常に多く、他の形成字と音がズレているとはいえ、読み方を変更するのは難しい文字です。
様
の字は旧字に樣
を持ち、羊
の音を持っています。旧仮名遣いでは「ヤウ」と書くのでそちらを使うこともできますが、他の羊
を持つ字との整合性があるので 考慮が必要です。
この字は中国普通話では「ヤン」(yang4)となるため、これを用いると比較的読みやすく、かつ他の語と衝突が起きません。
葉
の字は呉音・漢音ともに「ヨウ」と読みます。この字は現在の普通話だとye4つまり「イェー」のような発音になります。日本語の「ヨウ」と近づけると、「エウ」という表記もできるかもしれません。
蝶
や喋
と同じ部を持ちますが、音はバラバラです。変更による影響は軽微です。
溶
の字は容
と読みを共通にする会意形声文字で、水に容れるという意味です。溶
の字にはあまり熟語は多く無いですが、容
の方は“容姿”・“容易”・“許容”・“包容” などバリエーションが多くあります。
様
と容
の関係は、“様態”と“容態” などで衝突があり、用
と容
にも “用紙” と “容姿”、“容易” と “用意” などに衝突があります。
溶
と容
は漢音で「ヨウ」と読みますが、これは現代の中国語普通話だと拼音ではrongと書き「ロン」のように発音します。無理やり鼻濁音で対応させれば「ロク゚」と書くこともできるかもしれません。谷
が含まれていますが これとは同じ音ではありません。
使
は呉音漢音ともに「シ」と読み、史
と同系の字です。音読みで他の読みもありません。普通話拼音だとshi3で「シイ」のような発音となり、強調して書けば「シㇶイ」のようになりますが、日本人には区別困難な差です。
この字は非常に多くの熟語を持ち、変更するとかなり影響が大きいので そのまま使うのが適していると考えられます。
私
はこれも呉音漢音ともに「シ」となる字です。拼音だとsi1で「スー」と「チー」の間のように聞こえる音です。
この字は“私立”と“市立”の区別などでよく訓読の「わたくし」が用いられる他、大阪府交野市にある地名で“私市”(きさいち)や“私部”(きさいべ)のような読みがあり「きさ」とすることも考えられます。まれに同じ読みの苗字をもつ方もいますが、日本書記などに登場する非常に古い読み方で、“后“(きさき)の、 という意味になります。
不思議なことに日本語には単独で「チイ」と音読みで読める漢字がありません。なので「シ」に関する衝突回避として「チイ」は1つの候補になります。
試
は呉音漢音共に「シ」と読みます。普通話拼音では hが間にあるshiです。私
がsiなのと比べると空気の抜ける音が強く感じられます。この字は式
を部として持ち、日本だと「シキ」と読みますが中国だと同じshiの音を持つ形声字です。
試
も式
と同様に「シキ」のように変形しても良いでしょう。“試行”(シコウ)もそうですが、1音の「シ」には同音衝突が多いためこの字を「シキ」と読むようにすると回避しやすくなります。( “模試”と“模式”が同じ読みになりますが、“模試” は “模擬試験”の略語なので縮めなければ問題ありません)
ローマ字のように子音と母音を分解する観点が無い日本語ではsiとshiの区別はできませんが、この区別を明らかにして試
を「シヒ」「スヒ」あるいは「スㇶ」のようにかき分けても良いかもしれません。
脂
の字は 動物性の あぶら のことを指します。月
は肉であり、肉の旨味という意味から来ている会意形声文字です。旨味成分は脂質ではなくタンパク質の方なので現代科学からすると少しおかしい文字ですが、他に代用も ききません。
熟語は多くはないものの、“資質”と“脂質”、“脂肪”と“死亡” のように他の衝突もあるので変更は有効です。
この字は呉音漢音ともに「シ」の読みですが、拼音だとzhiになり「ツィー」のような音になります。これも「チヒ」とか「ツㇶ」などとも書けるかもしれません。また「旨味」という意味では「ヅイ」か「ズイ」のように濁音を使うほうが語感としてはいわゆるシズル感があり、適しているかもしれません。
“脂溶” という単語は 特に 「脂溶性ビタミン」あるいは単に「脂溶ビタミン」のように特定の単語と結びつきが強いです。アブラに溶けるかどうかと言うことは、実際のところ動物性であるかどうかとは関係ないので“油溶性” でもよさそうでもあり、単語自体を何かより科学的に適したものに変えて廃止してしまえば無理に読みを変える必要はないかもしれません。
子
の字は「シ」の他に“様子”(ヨウス) など 唐音で「ス」の音があることが知られます。“子葉” に関しては「スヨウ」とすれば ひとまず回避可能です。
言葉としては あまり頻出するものでもないため、訓読みで「こば」または濁らず「こは」としてしまうほうが 分かりやすいかもしれません。
“仕様” という言葉はあまり昔は多く使われない言葉でしたが、特にコンピュータソフトや機械製品の普及により多く使われるようになりました。これは英語のspecificationにあたる訳語で、時々「スペック」と呼ばれるのはこれの略語です。したがって「スペック」と書いて“仕様”と出るように漢字変換辞書を登録するのは1つの手ではあります。
他の方法としては純粋に訓読みして「つかえざま」としてしまうことも考えられます。打ち言葉では入力字数が増える不便がありますが、話し言葉では正確に字を伝えることができます。
仕
の字は基本は漢音の「シ」ですが、“給仕”(キュウジ)など まれに呉音で「ジ」と読むものもあります。しかし語尾に来ることから連濁にも見え、そのような音があるとは ほとんど認識されないでしょう。このため音読みで様
の字を読み替えて「シヤン」とすると比較的発音に困らず逃すことができます。