じょうし

  • 上司
  • 情死
  • 上梓
“上司”・“情死”・“上梓” は、すべて名詞です。
このうち “情死” と “上梓” については「ジョウシする」と言える動作性名詞です。

処方せん

上司
シャンジ/シャンシ/ジョウス
情死
ゼイシ/ジャウシ
上梓
あげあずさ

解説

“情死”・“上梓” は「ジョウシする」と言える動作性名詞です。

対して “上司” は普通名詞で、「上司する」と言うことは あまりありません。“情死”・“上梓” の語を用いる業務に関わる人で、「ジョウシです」と言い切りの文型などで、まれに漢字変換衝突が起こりえます。

の字は「ジョウ」のほか、“上人”(ショウニン)のように濁らない「ショウ」の読みと、“上海”(シャンハイ) で知られる「シャン」の 読みがあります。

「ジョウ」は  など常用漢字の中でも多くあり、「ショウ」にしても    など、どちらとも多くの字があります。このため「シャン」の読みは かなり有効です。

「シャン」を使うと “上記”vs“蒸気”vs“常軌”(ジョウキ)、“上体”vs“状態”vs“常態”(ジョウタイ)、“上昇”vs“常勝”vs“丞相”(ジョウショウ)、“上皇”vs“条項”vs“乗降”vs“情交”(ジョウコウ)、“向上”vs“工場”vs“恒常”(コウジョウ)、“以上”vs“異常”vs“異状”vs“移譲”(イジョウ) など多くの場所での衝突回避が可能となります。

“上司” と “上梓” は の字が共通していますが、言い切りの形以外で重なることはなく、この区別のために を 直接 読みを分ける必要は薄いでしょう。

強いて対応するなら の字は “宮司”(グウジ) の「ジ」や、 “下司”(ゲス) など ごくまれに用いられる「ス」の読みが使用できます。中国普通話でも「スー」(si1) であるので「シ」よりも「ス」の方が通用する場面もあるでしょう。

これらは “司法”vs“四方”vs“至宝”(シホウ)、“司祭”vs“子細”vs“私債”(シサイ) などの読み分けに使用できます。 ただしこのを用いる形声字として  があり、いずれも「シ」の読みが一般的です。を「ス」だと一貫性がなく覚えにくくなるので、変更するならできれば合わせて行なうのが望ましいでしょう。“動詞”vs“同士”、“名詞”vs“名刺”、“飼料”vs“資料”vs“死霊” などが分けられるため いくらか有効性があります。

“情死” は 恋愛関係にある男女が伴って自殺するようなことを言い、“心中”(しんぢゅう) などと近い意味があります。曽根崎心中の時代ならともかく 現代的にはあまり使われない単語ですが、そのテの小説や詩などを書く人には、“上梓” と時々邪魔になる可能性があるでしょう。

は「ジョウ」の他に “風情”(フゼイ) など「ゼイ」の読みがあります。の字を含む会意形成字であり、中国普通話ではともに「チン」(qing) の読みがあります(アクセントは異なる)。他に「ジョウ」にあたる旧仮名遣いで「じゃう」ともできます。

“上梓” は 書物を出版することを言う比喩です。はるか中世に 梓(あずさ) と呼ばれる木を 木版画に用いていたことから、版画をする業、転じて出版を指すようになったもので、何百年も続くかなり歴史の古い単語です。辞書で見ると類義語として “付梓” や “梓行” という単語が引っかかりますが、日本語では もっぱら “上梓” だけが定型句として用いられます。

しかし現代の出版社が木版画を使って書籍を印刷は しませんし、著者はペンか パソコンなどで原稿を作るので木版にはしませんから いずれの場合でも正確ではありません。ですから「拙著を上梓しました」などという表現が出てきたときには、ウソが含まれているかもしれませんから注意が必要です。

の字は 現在日本では常用漢字では ないため、公的には使用すべきでないとされている文字です。よって常用漢字の範囲に おさめようとするなら、“出版”・“執筆”、また本当の意味で木版画の版を仕上げることは “上木”(ジョウボク) に言い換える必要があります。もう少し持って回った言い方が良いなら “稿を納める”、“論をあらわす” などの言い方もできるかもしれません。

を含んでいて「シン」の読み方を引き継いだ形声字のようですが、このは木を彫るノミ(鑿)のような道具を表わす字で、まさに版木を示す会意字です。中国普通話では「ヅー」(zi3) のような発音になり、は「シン」(xin1) ですので異なります。要するにを「シ」と読んでも理解が難しく、国際的にも微妙なところがあります。それであれば「梓に上す (あずさにのぼす) 」と 訓読みするのが 誰が聞いてもズレない表現と言えます。

使用されている文字

  • [2]
    ジョウ(呉音)/ショウ(漢音)/シャン(唐音)/
    しやう(旧仮名遣)/シャン(shang4:普通話拼音)/
    うえ・かみ・あげ・のぼり(訓読)
  • [1]
    シ(呉音・漢音)/ス(慣用音)/スゥ(si1:普通話拼音)/
    つかさ(訓読)
  • [1]
    ジョウ呉音)/セイ(漢音)/チンク゚↗︎(qing2:普通話拼音)/
    なさけ(訓読)
  • [1]
    シ(呉音・漢音)/ツウ⤻(zi3:普通話拼音)/
    あずさ(訓読)
  • [1]
    シ(呉音・漢音)/スウ⤻(si3:普通話拼音)

この衝突語リストは、日本語に おいて同音異義語、あるいは文中に 単語をまたいで登場し、 聞き違いや カナからの変換時に誤変換を よく起こすものを ピックアップしたものです。

ここで示されている「処方せん」は、あまり一般的では ないものを 多く含みますが、 変換辞書に登録し 学習により上位にでるように することで 入力時の誤変換を減らす効果を期待できます。

一部特殊な拗音や別の文字種、変体かななど特殊な表記を使用する場合があり、 昭和から続く日本語のカナ<現代仮名遣い>の構成で 表記が認められていないものについては 現行の漢字変換ソフトそのままでは対応不能なものもあります。

将来的には 制度改定や 続いてシステムがアップデートされていくことが望ましいですが、キーマッピングの変更などでもある程度の調整が可能です。

その他の衝突語