“自由” と “事由” は どちらも純粋な名詞です。
“自由” という語は比較的近代において作られた語で、freedom または liberty に対する訳語としても広く一般的です。“表現の自由” などの個人の権利について主張するような文面で現れやすい語です。
“事由” は ものごとの起こるわけ・理由をより具体的に示す語で、比較的堅い文章や、とくに法律や規制に関する話題によく現れます。
この2つは どちらも名詞のため使い方が近く、「○○するジユウがある」のような決まった形が共通で使われる場合も時々あり、誤変換の可能性があります。しかし「犯罪に走ってしまう事由があった」を「犯罪に走ってしまう自由があった」などと誤変換しようものなら、そんな自由があるものか、といって 各所から お怒りを受けることは明白です。
“自由” と “事由” は 話し言葉ではアクセントの位置が それぞれ 前と後ろになると考えられるため、必要性があるとすれば 漢字自
と事
の変換前の文字が異なれば良いと言えます。利用頻度の観点で言えば “事由” のほうだけ少しずらせば良さそうに見えます。
しかし自
と事
の字は “自己”vs“事故” や “自体”vs“事態” などアクセント差異が認められない単語でも衝突していて、どちらかの音が異なるほうがおそらく有用です。この「ジ」の音は他に 地
時
持
磁
慈
辞
次
示
字
などとも衝突が起きます。
(自身/地震、自棄/自機/時期/磁気/次期、故事/誇示/固辞、自首/字種、私事/指示/支持 など)
自
は通常音読みでは「ジ」としか読まず、ほぼ固有名詞に近い “自由” の意味で訓読みは使えません。選択肢としては 中国語の読みを借りて「ツー」(zi4) は比較的よく知れた読みで使えると考えられます。が、字
などとの衝突も考慮すると少し工夫が必要な可能性があります。広東語も意識するなら「チー」あるいは「ツィー」くらいの音は考えうるでしょう。
この自
は他の字で鼻
息
臭
に含まれますが、いずれも音は共通していないので特に考慮する必要がありません。持
や時
は寺
を含みますし、字
は子
を含み、磁
は慈
とともに兹
を含むなど、考慮する範囲がかなり広いですが、その点で自
は比較的 自由な移動ができると考えられます。もしかしたら英語の me から取って「ミー」などでも良いかも知れません。
「ツー」と「ジ」の周辺で広げていくと、「ツィー」「チェイ」「ツェイ」「チェ」「チャー」「ジェイ」「ジェ」などはまだ日本語の音としては 空白地で、このうち「チェ」や「ジェ」は無理なく発音できると考えられます。
事
については「ジ」のほか まれながら 好事の「ズ」や、清音で「シ」が広東語由来などで考えられます。この字は史
と関連があるという説があって音はそのあたりと共通しているともいいます、が、ちょっと難易度の高い説明ですので一般には意識の外でしょう。
「シ」では “私有” や “雌雄” とまた重なるのでこれは使えません。そうすると「ズ」かその清音「ス」あたりでひとまず回避は可能です。
“事由” に関しては用語定義があって変更不能な場合を除き、一般には “理由” や “原因” などに言い換えることでも避けられます。よって この 事由vs自由 のみを基準にするよりも他の語で検討するほうが効果は高いと言えます。