“辞退” は「ジタイする」として使える動作性名詞で、文脈的に他との衝突は多くありません。
他の “事態“ “自体” は普通名詞です。
“事態“ と “自体” はともに単語としての抽象性が高く、“緊急事態” “異常事態” や “名詞自体” “それ自体” のように、〇〇ジタイの形で 別の名詞単語の末尾と接続しやすい傾向があります。
“字体” はグラフィックや文字を専門的に扱う職種以外では あまり使用頻度は高くない単語かもしれません。この語に対しては “書体” “字形” “フォント” “グリフ” “シェイプ” “フォルム” などカタカナ語を含めて多く言い換えがあり、将来的にはあまり使われないかもしれません。
しかしながら自
と事
の字は “自己”vs“事故” あたりでも 衝突があり、 字
と自
は “字画”vs“自覚”、“自主”vs“字種” などで 衝突しています。
“辞退” と “事態” では使う文型が異なり、気にする必要はなさそうですが、辞
には「ことば」という意味があり、“辞書”vs“自書“vs“字書”、“辞典”vs“事典”vs“字典”、ほか “答辞“vs“当事“ や “弔辞“vs“弔事” など衝突があります。別の字との組み合わせでは “送辞“vs”掃除”、“固辞“vs“誇示” などもあり、意外と問題字です。
これらは どれも日本語で「ジ」の1拍音で、もともと衝突しやすい読み方だということに起因します。
ひとまず “自体” と ”字体” の衝突を避けようとすると、体
が共通しているので 字
と自
のどちらかを変える必要が出てきます。体
には「テイ」の読みがあり他との区別は可能ですが、ここでは十分ではありません。
自
は通常音読みでは「ジ」としか読まず、訓読みで自ず・自惚れる・自らなど ありますが “自ら” 以外は常用漢字表外の訓です。現代の中国語普通話の読みを頼ると「ツー」(zi4) のようになります。
この「ツー」の音を頼りに 元の「ジ」と中間を取れば「ツ」「チ」また イ→エ の母音交替をかけた「ジェ」「ツェ」などの音が候補に上がると考えられます。
事
には あまり例はありませんが “好事”(コウズ)などで使われる「ズ」の音があり、同音は図
豆
頭
主
など比較的少数です。図
や豆
は厳密に言うと「ヅ」なので 分けて扱うならさらに少ないです。
辞
は 旧字体では辭
というかなり複雑な字を持ち、これは一般に「やめる」の読みがある他に、辛
の字が針を人体に突き刺す刺激を表し刑罰を与えており、言い訳をして逃れる様を表しているとか、かなり痛々しい意味を持っています。この左の偏(へん)は乱
と同じ意味です。
この字は各部の個別の音と異なる会意文字であり、音を変更したとしても影響がありません。中国語の普通話拼音ではci2と表され「ツウ↗︎」のような発音で「ジ」とは異なっており、総合的に見て今の日本語の音読みを残す重要性は あまり ありません。
「ジ」から少し離して、日本語の漢字音で使われない「ジェ」「ツェ」「チェ」などを当てると衝突しにくく効果的です。辛
の字の音「シン」と少し近づけるために撥音化して「ジェン」「ツェン」「チェン」でも良いかもしれません。
残る字
の字ですが、これは 字
単独で名詞として意味があり、「ジが違う」などと言えば これを指しますから、安易に音を変えられません。やるとすれば伸ばして「ジー」とするか、中国音を頼って合わせに行くかくらいしか選択肢はありません。
字
は中国普通話だと「ツー」(zi4)と読み、麻雀の役の “字一色”(ツーイーソー) などで聞いたことがあるかもしれません。通
や痛
があるので完全に解放されるわけではないですが、「ジ」に比べれば同音衝突は大きく減るので熟語によってはこの読みは役立つ可能性があります。