“中止” は 何かを途中で止めることですが、“注視”は「気をつけて みておく」ということで やめさせは しません。目下の結果が逆になります。
いずれも「〜スル」が付いて動作性名詞として機能します。
止
はひらがなのと
とカタカナのト
の両方の由来となった文字で、古語では「ト」の音が あったと見られますが、現在の日本語の熟語では、 “禁止” “停止” “廃止” “止水” “止血” など たくさん ありますが すべて「シ」と発音されます。
普及している熟語の量も とても多く、中国や他の漢字圏の例でも せいぜい「チ」の発音で、地
や知
など衝突も多いため、これを変更するのは極めて難しいと言えます。
中
の字は通常は「チュウ」ですが“街中”(まちぢゅう)のように連濁を生じたり、麻雀牌で「チュン」と読んだり、“中華” と書いて 「チョンファ」と読んだり、元韓国大統領の金大中(キム デジュン) のように、日本国内でも複数の外国語発音の存在が知られる文字でもあります。
文字としては広く活用されている一方で、音の揺れも多く、現在の音の適切かどうかは薄弱なものがあります。
注
の字はこれも「チュウ」と読みますが、もとは呉音で「ス」あるいは漢音で「シュ」です。
主
に氵
(さんずい)に付いたものですが、発音はこの主
から来ています。
“主人”(シュジン) や “君主”(クンシュ) では「シュ」、“坊主”(ボウズ)は「ス」の濁音化したものです。“法主”(ホッス) などの例もあります。
なお 注
は 文字を書き残すという意味もありますが、この意味は 常用漢字外の註
の置き換えです。“注文” “発注” “受注” などは 古くは “註文” “発註” “受註” と書かれていたとされます。
これらの単語は 同音衝突していませんから、もし 旧の意味に分化するのであれば「チュウ」の読みの改めは そそぐという意味のものにだけ適用するということも考えられます。
視
については “視聴”vs“市長” や “視角”vs“資格”のような 衝突の多い文字ですが、音の根拠が⺭
の示偏のほうにある文字で、音に重要な意味はありません。
見るという意味では簡単な見
が使われることが多く、音価の近い「シェ」や「チェ」などに ずらしたとしても比較的影響が小さいといえます。
こうして比較すると、この2語だけで言えば 中
を日本でもよく知られる「チュン」に まず 退避させることが一番簡単で、次に 視
を「チェ」に 逃がす、あるいは注
を旧来の「ス」に戻すというような動かし方が 適当かと考えられます。
中
と注
は1字単独でもそれぞれ使うケースがありますが、他に “中期”vs“注記” や “中位”vs“注意” など相性の悪い文字でもありますから、中
を動かすのは有効です。