すべて「シ」の音を持つ1字と、「チョウ」の音を 持つ 1字の組み合わせです。
「視聴」と「試聴」は「〜する」と結びついて動詞のようになる動作性名詞で、他は一般人が 行なうことでは無いので動詞にはなりません。
「シ」の音を持つ文字には他に、氏
紙
詩
私
詞
師
志
資
四
死
など非常に多くの文字があり、これら全てを「シ」と近い別の音に割り振るのは不可能です。衝突の少ないものはそのまま残すことになります。
「チョウ」の方も超
町
調
腸
兆
朝
帳
蝶
鳥
などのたくさんの文字があります。
まず「市長」と「市庁」があることから、長
と庁
は音を分けることになります。同時に「市庁」と「支庁」があることから、市
と支
も分けることになります。
庁
の字は もとは廳
という非常に難しい字で、丁
の字が同じ読み方をするので略字として置き換えられました。
この庁
を「チョン」とするのは部の丁
を用いる「丁髷」(ちょんまげ)の読みからで、他に「丁稚」(でっち)などから とって「デツ」とすることも考えられます。
常用漢字の 範囲外で「テイ」との読みも ありますが、「シテイ」では「指定」や「師弟」と衝突するので あまり都合が良くありません。
庁
の字は一般に 行政に関わる人にしかあまり関わりがなく、そのくせ “県庁”vs“堅調”、“都庁”vs“登頂”、“登庁”vs“盗聴”、“省庁”vs“象徴”、“退庁”vs“体長” などのように、あちこち違う字と衝突を起こす 問題字です。
行政は市民の利便性のために 自分たちがよく使う文字を 他と衝突しないところに動かして 譲るというのもまた行政の仕事の1つと考えても良いでしょう。
市
の字は「市場(しじょう)」「市民」など行政と少し関わるようでいて、無関係な場所でも時々使われます。 地名や駅名などにも使われます。
市
を「シス」とする根拠には“市井” “市場”など よく使われる熟語に続く文字にs/zの音が登場しやすく、語感として「シセイ」≒「シスセイ」、「シジョウ」≒「シスジョウ」としても あまり遠く無いというところがあります。
市場(シジョウ)は また“試乗”や“私情”とも重なることから、
「シ」に近い音には「シェ」「チ」「チェ」「サイ」「スイ」「セ」「セイ」などありますが、シェやチェのような特異な音以外はどれも別の同音語を生じます。
シェの音は資
に用いこちらは“資格”vs“死角“や“投資”vs“凍死”で資
と死
を区別し、チェの音は 資格vs視角 などで 視
に当てています。
“視聴”と“試聴”を分ける上でもどちらかの シ の字を変えなければならないですが、スイ と サイ はそれぞれ「水鳥(スイチョウ)」「最長(サイチョウ)」と重なります。
仮に視
を セ とすると「視界」と「世界」が同音になり、セイにすると「視界」と「政界」で衝突します。つまり視
にあてられるのは シェ・チェ か、スェ・スィのような日本人の発音しづらいものしか残らないわけです。
「試聴」の試
の字は式
を部に持つことから、シキ とするということが考えられます。他の語が受け入れられない場合の保険ともなりますが、 試験vs私見(しけん) や 入試vs乳歯(にゅうし) を分ける上でも役立ちます。
長
と聴
が同音で残りますが、これは “長音”vs“聴音” でも重なっています。
長
の字は帳
や張
などの部を構成する要素で、それぞれ同じ音を持つ形声文字です。ここを変更すると他に影響を与えることになります。
チョウ の音に近いものとしては
「チョン」「チャオ」「 チャン」「チオ」「テオ」「 テウ」など ありますが、ここでは シの音を変更することで回避できているため、必須とは 言えません。
変更上の影響がないという意味では見せかけではない音通りの チョオ を使って分けることを候補に挙げるに とどめます。