“潮位” “弔意” “弔慰” は すべて普通名詞です。いずれも使用される分野が限定的で、あまり多くは用いられません。
“潮位” “弔意” は単独で使用されますが、“弔慰” に ついては特に “弔慰金” “弔慰文” “弔慰状“ のような特定の複合語でのみ多く現われます。“弔慰” には 類義語として “哀悼”(アイトウ) が “哀悼文” などの形で使用されるため、同じ場面でも必ずしも必要にはならない単語でもあります。
“弔意” と “弔慰” は 紛らわしいですが、どちらも人の不幸、とくに死を悼むときに使う言葉で、“弔意” は 弔らう気持ちを言う名詞で、 対して “弔慰” は 気持ちを指す語句ではないという違いがあります。
“潮位” は 海の潮の高さを言う単語です。漁業や海運など 海で仕事をする場合には重要な情報である一方で、それ以外の人にとっては あまり関心がない語句かもしれません。“弔意” とか “弔慰” は 職業など分野に関わらず聞く単語であるのと比較すると利用者が限定されるでしょう。
よって “潮位” と 他の “弔意”・“弔慰” は 全然関係なくて、衝突する場面はもともと少ないのですが、いずれも使用頻度がそうそう多くない単語同士でもあるので、もっとよい言い換えや読みの変更がされにくい関係にもあります。
語の繋がりとしては「チョウイを示す」「チョウイを見せる」「チョウイが高まる」「チョウイをはかる」などが変換で衝突します。
また根本的な対応ではないですが、“潮位” は “潮高” とすることもでき、これは口頭では「しおだか」と言い換えることも可能です。
しかしながら実はこの例に限らず、意
位
慰
のような、カナにして1文字になる漢字同士は もともと衝突例は多く、対策が難しいものでもあります。
「イ」と読むものでは他に以
井
意
遺
緯
威
異
維
などがあり、 “以後”vs“囲碁”、“異常”vs“以上”vs“委譲”、“偉大”vs“医大”、“以外”vs“意外”vs“遺骸”、“井戸”vs“緯度”、“意見”vs“違憲”、“遺体”vs“異体”、“維新”vs“威信”、“行為”vs“好意”vs“高位”、“以前”vs“依然” など かなりの組み合わせがあります。
つまりこの「チョウイ」の衝突 そのものを問題とする以前に、「イ」に対する他の読みが必要だと言えます。
可能性としては まず い
には古くはゐ
(ヰ
)の字があります。位
の字はもともとヰ
が使われており、また現状の中国普通話でも拼音でweiと書き「ウィ」に近い読みとなります。これを活用すれば “潮位” は「チョウヰ」「チョウウィ」または「チョウウェイ」としてまず書き分けが可能です。
他の例では 別の音にずらすことになりますが、「イ」に代えて「エ」「イン」「イク」「イキ」「イツ」などが現行の日本語の音としてすでにあるもの、ほかは「イㇽ」「イㇺ」「イㇷ゚」「イェ」「ユィ」「ユㇷ゚」あたりが外来語の音としてはありえます。
意
は位
の字と立
の部分が共通していますが、一般に音
と心
の組み合わせから成ると解釈されます。音
は口
に点を加えた言
のことで、ゆえに人が立つ姿を表わす立
とは無関係で、発音の関係も考える必要はありません。
中国普通話を頼ると「イー↘︎」(yi4)であり実際には母音のみ[i]ですが、この拼音yiは特に日本語ローマ字や英語読みされるとヤ行のイであろうということになります。日本語カナ表記の上では「ユィ」が使えるものの、「イ」との違いを例えば舌を下の歯の裏に押し当てたまま発音するのかどうか だとしても聞き取りも困難であるので、現実的には「イェイ」くらいの差をつけないといけないでしょう。
“弔慰” を “弔意” と分ける意義はあるかですが、意
と慰
は “辞意”vs“自慰” や、その形声字の部の尉
も含めれば “注意”vs“中尉” や、“大意”vs“大尉”vs“体位” なんかで同音語があります。別の字では “慰労”vs“胃瘻”(イロウ) などもあります。 ゆえに慰
に別音をもたせるのも有効ではあります。
慰
は位
と同じく古くは「ヰ」であり、現代中国普通話でもやはり「ウェイ」(wei4)です。また その形声字の 声符でもある尉
も同じく「ウェイ」です。この字は人(左上の尸
)を台座に座らせて背中をさすったり湯で温めるなどの行為を示していると見られ、どちらもほぼ同じ意味を持ちます。尉
は また “大尉” “中尉” に見られるような官職名を示した假借でもあります。この字は常用漢字表外で「ウツ」の読みを持ちます。古典表記が「ヰ」であることからすると、入声で「ツ」は脱落した上に「イツ」「ウェツ」「ワツ」のあたりの中間の音が流通していたものと考えられます。
「チョウ」の方に着目することもできます。
潮
は氵
+朝
で、朝
の「チョウ」と同じ音を持つ形声字です。このタイプの音は共通しているほうが覚えやすいので、仮に変更するなら同時に変更すべきでしょう。しかしこの朝
の方はと言うと、登場頻度は かなり高い字ですが 訓読みの「あさ」が使われやすく、あまり衝突は起こしません。“朝会”vs“町会”(チョウカイ)、“朝刊”vs“長官”(チョウカン) などあるにはありますが、あまり効果は高くありません。“朝礼”(チョウレイ)、“朝食”(チョウショク)、“翌朝”(ヨクチョウ)、“明朝”(ミョウチョウ) など 日常で同音衝突が生じません。
一方で弔
のほうは、葬儀業など特定の業種の方を除いて、そもそも頻繁に使う字ではないため、音の変更によって得られる効果は限定的とはいえ、悪影響は生じにくいと言えます。
弔
は弓
を含む字ですが、弔
自体が木に布や革を巻いて薪とした象形文字とされます。弟
や剃
などに含まれていて同じ薪に関連した字ですが、音は「テイ」で 異なっています。
弔
を現代中国語で追うと「テャオ」(diao4) となり、現在の「チ」= /tʃi/ (chi) の発音と言うよりかは、上代日本語の「チ」= /ti/ (ティ) の 発音をうかがわせる音になっています。弟
などが「テイ」であることからしても おそらくは「チョウ」の読みは あまり歴史的正統性が高くない可能性があります。
関連性を考えるなら「チョウ」に「テイ」を混ぜ合わせた音を作る方法があります。後半の「ェイ」の部分を持ってきて「チェイ」とすれば、「チェイン」(chain)、「チェイス」(chase) などの英単語を知る現代人なら難なく発音できるでしょう。また「テ」と「ョウ」を混ぜて「テョウ」として 下の歯を使わず発音するものとすることも考えられます。
「テョウ」は スマートフォンやカナ入力ならよいですが、ローマ字入力では texyou など少々面倒な操作になります。これはローマ字設定を調整するなどして tyou、thou、tjou などで出るように調整する必要があるかもしれませんので、どちらかといえば「チェイ」のほうが当面は都合が良いと考えられます。