“停戦” は戦争もしくはそれに準ずる軍事活動を停止することで、“停船”は船をとめることをいいます。
日本や、海に囲まれた他の国では 戦いをやめることと船をとめることは、同じような場面で使われる単語ですが、程度に大きな差があるので間違えてはならない語でもあります。
2つの単語は停
の字が共通していることから、後ろの戦
か船
のどちらかの音をずらさなければ同音は回避できません。
戦
の字はもともと戰
の略字です。
またこの字は「カ」と読む戈
( 矛旁 ) と、主に「タン」と読み常用外で「セン」と読む單
あるいは単
の会意形声字です。戈
は振り下ろす刀を、単
は「ひとえ」とも読み1枚の板のようなものを指しますが、盾を構えた人の姿を表すともいい、古代の人が武器を持って戦う姿そのものを表しています。
戦
の発音は単
から来たもので、その単
には「タン」のほか古語でのみ「セン」の読みがありますが、今の日本語では“単位” “単独” “単体” など「タン」としか読まれることはありません。
この字は簡体字では战
と書きピンインではzhanとなり、しいてカタカナで書くと「ツァン」「ヅァン」「トァン」のようになります。旧代の仮名遣いでは書き表せない音でもあります。
同じ部を持つ禅
という字もありますが、この字は「ゼン」として定着しています。中華圏での音もさることながら、いづれにせよカナの表現力の不足による問題でうまく音をマッピングできない例でもあり、今の音が最適であるという根拠が乏しいということでもあります。
単
の読みの「タン」を借りてきて、“停戦”を「テイタン」としても良いですが、“戦場”(センジョウ)が「タンジョウ」となると“誕生”と重なってしまうのでよくありませんし、文中の「〜していたんですが」のような妙なところで衝突を起こします。
したがって カナの側に何らかの修正が行われるか、「ツァン」「トァン」あるいはセンに近い「ツェン」のようなア行拗音を用いるかの選択が有効であると言えます。
一方で船
の字は、沿
や鉛
の字で使用される㕣
(エン)を旁として持つ文字で、本来なら他と同じ「エン」と読みそうなところですが、「シュウ」と読む舟
と混じってしまったのか、例外的な音になっています。
覚えやすさで言えば同じ「エン」を用いると良いですが、そうすると“停船”は“庭園”と衝突しますし、“船上”は“炎上”と衝突しますから副作用のある変更です。
音の共通を狙って舟
に合わせて「シュウ」にすれば “船体” が “醜態”、“汽船” が “奇襲” などに衝突するので こちらも ふさわしく ありません。
そうするとそのまま「セン」で残せばよく、あるいは必要であれば他と衝突しにくい「シェン」など中間的な音をとるかの選択と考えられます。