一般ルールとしては「セン」の音に対しては「シェン(shen)」や「スェン/スヱン(swen)」、「ジョウ」の音に対しては「ジョオ」「ジャフ」「ジャン」などの近傍の代替音の割り当てに変更が可能です。
(ジョウ
のウ
はオ
と異なるという考え方)
“線状”と“扇状” は それぞれ「線状降水帯」とか「扇状地」の語句で気象や地学の世界で使われるため、区別が望まれます。
このうち扇
に ついて「扇状」は「おうぎ状」として回避が可能ですが、「扇風機」「換気扇」「扇情的」などの熟語でもよく登場し、「オウギ風機」とか「換気オウギ」として回避するのは かなり違和感があります。例外的に英語の fan からとって「ファン状」でも差し支えはないかもしれません。
線
の方も “回線” “電線” “線形” などなど大量の熟語が存在します。しかし扇
とは異なり、単独の文字でも非常によく使われることから、これに swenまたは shen のいずれかの音を当てるのは効果が高いです。
同じく単独で使われうる千
1000
栓
などの語句とまず区別ができるようになります。“線形”(センケイ) は “船型”、“電線”(デンセン) は “伝染”、“回線”(カイセン) は “海鮮” “開戦” “開栓” との区別が可能になります。
それでもなお “線状” と “線上” とは区別できませんが、同じく他の熟語と衝突を起こしやすい上
の字をジャン(または語頭の場合シャン)とすることで回避可能です。この読みは “上海”(シャンハイ) で日本で良く知られています。
“扇情” と “煽情” は 「感情を煽る(あおる)」の意味で、「扇情」は字が おかしいので避けるにしてもやはり衝突しています。
ここで後ろの情
の字は、これも単独で使われることが多いものですが、これには旁(ツクリ)に形声文字でもある青
が使用されています。
青
は “青春”(セイシュン)、“静粛”(セイシュク) “申請”(シンセイ) のように、読みとしても よく呉音の「ショウ」ではなく漢音の「セイ」の方が一般によく使われ、また “風情”(フゼイ) のように情
も「セイ」音が使われることもあります。仮に “煽情” を「センゼイ」と読んだにしても衝突する語句は少なく日常的な単語でないので あまり影響がありません。
“千畳”・“千帖”・“千丈” についてはいずれも 最初の千
については特別に熟語と言うよりかは数量を示すもので、コンピュータでの入力では1000と入力すれば変換の衝突にはなりません。発音に際しては「セン」にアクセントを置くと他の語と衝突は無いでしょう。後ろの畳
帖
丈
はそれぞれ数の単位ですが、畳
は帖
と間違えても実質困ることはないですが、帖
は「チェ」、畳
は「デフ」のように中国音に近づけるか旧仮名遣いとで分けることは可能です。丈
を数量の単位として使うこともですが 特定の職種以外では 非常にマレなため、独自の単語登録でも問題は無いでしょう。
“僭上” という単語は 身分をわきまえず おごった振る舞いをすることを言いますが、日常的に用いられることは極めて稀で、ほぼ固有名詞のようなものです。したがってそのままでも候補の下の方にあればあまり影響はありません。 僭
の字は他に “僭越”(センエツ) などがありますが、これもほぼ「僭越ではございますが...」の形で 定型句のようなもので、使う場面がほぼ固定されています。強いてこの文字の読みをいじる必要性はあまりありません。
“洗浄” は この組み合わせの中では 登場頻度の高いものですが、「センジョウする」の形で使う動作性名詞で、この使い方をする限りは他と衝突することはありません。
ただし洗
は “選択”vs“洗濯”、“洗剤”vs“潜在”、“水洗”vs“推薦” など他の語でもいくつか衝突を起こす文字です。浄
についても “浄化”vs“城下”、“浄水”vs“上水” など ぶつかるものがあります。
洗
の字は先
の字を声符としながら同時に つま先を表したもので会意形声文字で、先
と洗
は同じ音にしておくべきということになります。先
も“先行”vs“選考”vs“閃光”vs“線香” や “先方”vs“戦法”、“先任”vs“専任”vs“選任”vs“仙人” など何かと衝突の多い字なので、合わせて移動することには効果が見込めます。
中国語を頼ると洗
は「シイ⤻」(xi3) または「シエン⤻」(xian3)、先
は「シエン」(xian1)、線
が「シエン↘︎」(xian4) のような感じなのでどちらをどう動かすかは容易に決めにくいですが、xiが あるぶん先
の方が「シ」の音が近いといったところでしょう。
浄
の字は争
(旧字:爭
)が付いていますが、この字には複数の解釈があり、ひとつは 家畜である牛の角を持つ者の手から別の者が手で奪い取る様を示した現在の「あらそい」と同じ意味で、もう1つは両手を使って筆や布などを握る様を表し、「きよめる」の意味はこちらから来ています。同じ形のためとても分かりにくいですが、争
の字とは発音を合わせる必要は ありません。
この字は中国音を頼ると「ジン↘︎」(jing4)となり、「ジョウ」とは かなり離れます。代わりに旧仮名遣いでは「ジャウ」であり、ローマ字なら jau で打てるので使いやすい並びです。jaを「ジャ」とするか「ジァ」とするかはジ
にすでに y が含まれていると考えるかどうかですが、「ジェ」「チェ」など他のカナの使い方からすると「ジァ」の方が整合性があって良いでしょう。