対
で始まるものと大
で始まる複数の熟語8つの対立です。
まず “大正”(タイショウ) に関しては 日本の年号で 大正時代のことを指しますが、一種の固有名詞のようなものなので、これはどうしようもありません。文脈的にまぎらわしい状況では 基本 “大正時代” とフルに指定した上で、 他の語句が これと重ならないように工夫することになります。
大
は 古い方の呉音で「ダイ」、より新しい方の漢音で「タイ」の読みがあり、“大半”(タイハン) “大抵”(タイテイ) “大国”(タイコク) “大切”(タイセツ) など語頭では「タイ」が多く、“偉大”(イダイ) “巨大”(キョダイ) “広大”(コウダイ) など 後ろに来ると 濁音の「ダイ」がほとんどになります。
中国普通話 などをあたると 拼音では da と書くものの発音は「ター」に近い音です。あいさつで 大家好(タージャハオ)と言うので 吹き替えでないニュースなどを探せばすぐ聴くことができます。
日本語では 「たい」は “痛い” “硬い” のような語幹にた
を持つイ形容詞や、“見たい”、“聞きたい” のように欲求を表す助動詞にもあるため、語末で「たい」を使うと混乱が生じやすくなる可能性があります。
朝鮮語で 金大中(キムデジュン)の「デ」でもありますが、これは語頭では濁らず「テ」あるいは「テー」になります。この音を持ってくるのは やや無理があるようですが、国内の例でもナマリで「ありがたい」が「ありがてー」のように 連母音「アイ」が「エー」に転訛するパターンがあります。このエリアでは “大層”(タイソウ)は「テーソウ」であり、“大事”(ダイジ) は「デージ」ですから、「ダイ」「タイ」の代わりに「デイ」「テイ」を使うことも不自然ではありません。
大
が頭につく単語は 大きなものなら すべてに あてはまり、“大企業” “大地震” “大損害” など無限にあります。 「ダイ」だと題
代
台
第
弟
内
戴
醍
が ありますが、「デイ」だと泥
のみで重複を生じにくいため、ここに逃がすと有効と考えられます。
“対象” “対照” “対称” の 3つは いずれも 常用漢字の範囲内ですが、それぞれ言っていることが抽象的で、漢字を習いたての同じ字を使う語彙が少ないうちには区別が難かしい熟語たちです。
意味としてはそれぞれ和語で言えば「まとを しぼる」「くらべて めだつ」「むかって つりあう」のようにすれば良いのですが、そうも効かない状況もあります。特に “対称” は “線対称” や “点対称” のような算数の用語として定義されていたりするので、他と区別して覚えざるを得ないこともあるでしょう。
照
は訓読では「てらす」ですが、象
は「かたどる」と読むものの常用漢字の範囲外、称
はハカリが釣り合うという意味ですが そのものズバリこれだという訓読がありません。“名称” という単語がありますが、“対称” と同じ称
が使われる理由を理解するのは かなり難かしいです。
もともと称
は稱
の略字で、日本語での音読みは「ショウ」しかありませんが、この字は中国普通話の拼音ではcheng1と書き「チョン」あるいはchen4で「チェン」のような発音となります。称
だと 旁に小
を含んでいるように見えますが、もとの字形は 釣った魚の重さを 手(爪)で掴んで はかる 様子を表しており、小
と同じ音にそろえる必要はありません。
照
の読みも呉音漢音ともに「ショウ」としか読みませんが、中国普通話だと zhao4で「ツァオ」となり、象
はxiang4で「シャン」と読むので照
と称
と象
は すべて異なるということになります。
照
は旧仮名遣いでは「セウ」でもあり、また象
は「ゾウ」あるいは旧仮名遣いで「ザウ」となります。
“対症” は 「症状に対して」の意味ですが “対症療法” のような特定のワードと強くコロケーションを持っているのであまり音の区別は必要ないですが、“症状”vs“賞状”、“症例”vs“奨励” のような形で 症
自体に同音衝突が見られます。
症
は正
に疒
を付けたも形声字ですので正
の音と合わせるのが分かりやすいです。したがって直接「セイ」の読みが考えられる他、中国普通話 zheng (チォン、チェオン) の音を借りて使えます。もとの「セイ」「ショウ」と近く、日本語のカナとしても扱いやすいところでは「チェイ」「シェイ」「チェン」あたりも考えられます。
賞
は 財を表わす貝
と、音符かつ高殿を表わす尚
(ショウ)から成る会意形声字で、財を与えてたたえることを指します。 “賞状”vs“症状”(ショウジョウ) ・“同省”vs“銅賞”(ドウショウ)・“金賞”vs“僅少”(キンショウ) など いくつかの同音語があるものの、数は少なめです。尚
を使う常用漢字としては堂
が ありますが、音は共通しておらず、尚
だけが影響すると考えられます。形声字では ありますが、音を動かしても 比較的影響が小さいと言えます。
この字に他の読みはなく、中国普通話を頼ると「シャン(ク゚)」(shang)の読みが 得られます。末音が ngのケースは日本語の音に「ウ」が割り当てられていることが多いですが、現代的には「ン」と表記してその異音として扱われるため、そのまま「シャン」でも 良いということになります。
そのほか細かい表記での対処では、「ショウ」は「シォウ」、「シャン」は「シァン」というふうに分けることは可能です。これはローマ字のマッピングを shan / syan、shou / syou と設定を変えれば可能です。英語表記で oh を「オョ」ではなく「オー」と読むのですから shou は「シォウ」のほうが適すると考えれば 理解可能な置き換えでしぉう。