“資料”・“飼料”・“史料” はすべて名詞で、料
の字を共通して持ちます。発音のアクセントも不確実で、おそらく耳で聞いても区別はできません。
”私領”・“死霊” は、これらの単語の中では使用頻度が低く、業務で使用するような語句ではないので 必要とするのは あくまで 作家やシナリオライターのような職種に限定されるでしょう。
この中で最も広く使われるのは “資料” で、特に職種や業界と関係なく用いられます。したがってこの 資
を対策すれば ここで扱う語句の中での衝突は ほぼ解消することに なります。
資
の字は 次
と貝
を部に持つ会意形成字で、「シ」の音は次
から来ています。次
は “次第”(シダイ) などで「シ」が使われますが、通常「ジ」と読むことが多いです。“姿勢”(シセイ)の姿
や、“恣意的”(シイテキ) の恣
がありますが、いずれも部品となると「シ」の読みが主となります。
この字は 中国普通話では「ツー」(zi1)の発音となり、英語圏では拼音が英語読みされて「ジー」となったりします。そこからすると「ツ」のほか 母音交代させて「ツィ」や「ジゥ」「シゥ」などが考えられます。「ツィ」は「チ」と聞き分けにくいため、[ィ] のかわりに [ェ] として 「チェ」や「シェ」「ジェ」あたりも代用に使えるかもしれません。
“資料” を 動かす代わりに他を動かすやり方も考えられます。
“飼料” の 飼
の字は司
を部に持つ形声字で、日本語では「シ」、中国語だと「スゥ」(si2)のようになります。この司
の字は 殆ど使われませんが常用外の音読みで「ス」の読みがあり、“下司”(ゲス) という単語があります。特殊な例にはなりますが、「スリョウ」であればこの単語に関して言えば回避には有効です。
史
の字は音読みでは「シ」の読みしか日本語ではありません。“歴史”・“日本史”・“世界史” など史
単独でも歴史の意味を持ち、音との結び付きが強いと言えます。
この字は歴史と同時にその文章 つまり 歴史書の意味もあることから、日本語では「ふみ」(文)、「あや」(綾)、「のぶ」(述べるの意) といった人名の名乗り字として使われます。いずれも常用漢字の範囲外なので薦められたものではないですが、「ふみ」に関して言えば特殊な設定なしに漢字変換で出る読み方です。「ふみリョウ」なら消去法的に通じる可能性はあります。
史
は “史学”vs“歯学”vs“私学”、“史書”vs“支所”vs“司書”、“社史”vs“斜視” など いくつかの場所で衝突があります。このため別の読み方を与えれば有効ですが、中国読みなどを当たっても代替に良い読みがありません。また同じ意味合いを含む会意形声字の使
と音を共通としています。使
の字も極めて多くの熟語を持つ字であることから、下手に音を動かすと影響が大きすぎる可能性が高いです。
霊
の字には「たま」の訓読みがあるため こちらを用いて「シダマ」にしたり、または旧仮名遣いの「リャウ」から「シリャウ」とするなどが考えられます。旧字は靈
であり、並
とは無関係です。霝
を声符にもつ形声字ですが、常用漢字の範囲ではないので、無理に音を合わせにいく必要もありません。
“私領” については 現代で言えば “私有地”(シユウチ)と言い換えるほうが良いですが、古典などで 固有名詞的に必要とすることもあるでしょう。この場合は「わたくしリョウ」のようにして読むのが素直です。
領
は えりくび とも言い、令
を声符として持つ形声字ですが、「レイ」とも読むことができます。これを含む他の字で鈴
がありますが、こちらは「リン」と読みます。領
の字が それ自体で 同音語を持つ例は “綱領”vs“香料”(コウリョウ)、“領有”vs“寮友”(リョウユウ) など 用途が限定された単語に偏っています。そのため 音を変えても あまりメリットがないともいえます。
そこからすると 長過ぎる「わたくし」を縮めて「クシ」のみ残し、「クシリョウ」あたりで単語登録すると 打鍵数も少なく、耳で聞いてもおよそ想像がつく範囲での置き換えになるでしょう。
このパターンは 源頼朝(みなもとのよりとも) の頼
(より) が「たより」の一部を取るようなもので、頭の文字が脱落する例は日本語によくあるやり方の1つです。