“制度”・“精度” は どちらも 普通名詞です。
指し示す方面が違うにも関わらず、どちらも職種などに関係なく使用される言葉です。“制度” は 行政や会社組織などの広くルール全般を言い、いっぽう “精度” に関しては 機器の測定の精密さを主に指しますが、統計や人間の予測についても用いられます。
この2つは いづれも「セイドが求められる」とか「セイドがある」という形で よく現れ、「効果を測定する セイド がある」、「より高度なセイドが求められる」のように どちらの字か判断の難しいことがあります。またアクセントも一般的に違いは無く、漢字入力時だけでなく 耳で聞き分けるのも困難です。
音を分けるなら度
の字が共通しているので 精
と制
の字のどちらかを変える必要が生じます。
制
は木の新芽を刀で切りそろえることを示す 会意字で、これ自体の音が他から影響を受けてはおらず、基本「セイ」の読みしか用いられません。衣服など作業工程がより複雑なものづくりを言う製
の字の一部では ありますが、中国語簡体字では制
は製
の置き換え可能な字であり、ともに「チー」「ツィー」あたりの読み(zhi4)になります。日本語では “制作”と“製作” など書き分けたりしますが、制
は製
より意味が広いだけで、つまり両方まとめて音を変えてもあまり問題はないと言えます。
制
を含む熟語の同音衝突には “制度” のほか “制服”vs“征服”・“制作”vs“政策”・“規制”vs“既成”vs“奇声”・“禁制”vs“近世”vs“金星” など多数あり、変更は有意義です。しかし同時に “定時制”・“従量制” などのように「○○制」の形を取る複合語を無限に作る文字でもあるので、新たな読みを増やすと思わぬ衝突が起きて混乱する危険も抱えています。
このあたりを考慮すると「セイ」から 本質的に音を変えない「セエ」あるいは「セヰ」(sewi)などであれば少なくとも耳で聞く分には 違いが問題となることはありません。必要に応じて よりハッキリと 発音すればよいということです。
他のアプローチとしては「セイ」を古典的な置き換えをして「セヒ」としたり、さらにハ行の古い発音であると推定されるp音を用い「セピ」としてしまうなどです。「セヒド」は やや発音が難しいですが、「セピド」(sepid)なら発音は比較的簡単です。「セヰド」「セウィド」(sewid) よりかは マシでしょう。「セピ」が他の字と ぶつかる可能性が ほとんど無いという点は特に「○○制」に有効で、同じような性格を持つ「○○性」との衝突回避にも有効です。
精
のほうは青
を部に持つ形声字で、他に情
清
静
などと関連しており、もし音をいじると影響範囲が大きくなります。この精
の字は漢音読み「セイ」のほかに “不精”(ブショウ) “精進”(ショウジン) “精霊”(ショウロウ) など古く呉音の「ショウ」の読みも生きています。中国普通話だと「チン」(jing1)となり、拼音英語読みだと「ジン」となります。声符の青
は有気音で、強いてカタカナで書くと「ツㇶン」(qing1)のようになりますが、形声字とは言え あまり音は安定していません。
精
に呉音を使って「ショウド」とすると、“照度” や “焦土” と重なるために、これはそのまま使えません。情
や静
から音を借りて「ジョウド」だと “浄土” と重なります。“浄土” は仏教用語で日常的に使用されることは まれであるので無視しても良さそうですが、「セイ」の代わりに「ジョウ」を一般化すると “上司” のつもりで「ジョウシ」と書いて “精子” にヒットしても困りますし、この読みもあまり使い勝手は良くありません。日本語的な近縁の読みの範囲には解は無いということです。
青
の読みのうち中国読みに近い「チン」は “青島”(チンタオ) などで比較的知られており、精
が使われる熟語 (精度・精密・精緻・精巧・精機など) の中では比較的衝突がありません。