なんか

  • 南下
  • 軟化
  • 難化
  • 何か
“南下” “軟化” “難化” “何か” は いずれも一般名詞です。
“南下” “軟化” “難化” は 「ナンカする」と 言うことが可能な動作性名詞、
“何か” は 時として 副詞的に用いられます。

処方せん

南下
ナムゲ/ナㇺカ/みなみくだり
軟化
ニャンファ/ニャンケ/ニョンクァ
難化
ナンファ/ナッケ/デャンケ
何か
なにか/ねにか/なねか/なく゚か

解説

“南下” “軟化” “難化” は 「ナンカする」と 言うことが可能な動作性名詞です。いずれも 比較的新しい 表現で、明治以降に現われた漢語と見られます。

“何か” は 和語である「なに」と「か」の連結した「なにか」の、「に」の 母音が 省略された形です。「なにか」より「なんか」の方が やや口語的で くだけた印象を持ちますが、「なん」は常用漢字訓読として含まれます。

“南下” は 用途が離れているので 文脈で除外できますが、のこりは「態度がナンカした」「問題がナンカした」などいくつかの状況で誤変換や 聞き違いを起こす可能性があります。とくに“軟化” と “難化” は 誤まると意味が逆になります。

“何か” は 「なんかを食べる」など名詞としても使われますが、ときに副詞的に用いられます。例としては「なんか違う」「なんかニオう」などで、これは「すこし」「ちょっと」「どこか」「どうも」などと同様の 情報元が あいまいで不確かな様をいうと考えられます。

また 「○○するのは何か」「○○とは何か」のように 文末に来て疑問文を作ることもあります。このパターンは やや堅い言い回しなので 「なにか」と読むことが 多いと考えられます。

助詞「か」が 文法的に複数の用法を持つためですが、日本語の漢字変換や 機械的分析の上では厄介な存在です。

“何か” の対応としては 「なにか」と読むことが最善ですが、利用頻度に対して発音難易度が少し高い可能性は あります。 ローマ字に分解すると na ni ka ですから、たとえば ne ni ka (ねにか) や na ne ka (なねか) とすると 少しナマっては聞こえますが 口型の移動量を減らすことは可能です。

表記上の衝突を避けることのみが問題であれば、の代わりに く゚鼻濁音で書くことも可能ではあります。これはカナ漢字変換の精度は上がりますが、入力に ひと工夫 必要なので 利便性は低めです。

“南下” “軟化” “難化” は、どれも「なん」+「か」の漢字2文字からなる単語ですが、この「か」の部分が 特に 自由過ぎる助詞「か」と重なることから問題を起こしやすくすると言えます。

とくにに ついては 状態を表わす ほぼすべての名詞と結合することから、できれば末尾で「カ」と読むことは避けたほうが安定的です。

は「カ」のほか、“変化”(ヘンゲ) “権化”(ゴンゲ) に見られるように「ゲ」や、“教化”(キョウケ)の「ケ」が現在でも利用できます。「ン」の次に来るので濁音の「ゲ」の 方が ナチュラルですが、「ゲ」はあるいはと 聞き違う可能性があるので 「ケ」を使って「ナンケ」としたほうが識別しやすくなります。

もう少し広げると、この字は もとは 合拗音「クヮ」で「カ」とは区別する音であり「クヮ」または「クァ」で書き換えられます。そのほか 現代 中国音を借りた場合は「ファ」(hua)が 近い音として考慮できます。語末の「クヮ」は「カ」と 聞き分けにくいので、どちらかといえば「ファ」の方が 有効性は高めです。

“難化” と “軟化” は が共通していることから、だけではなくの音を分けないと区別できません。

訓読みで言い換えられるかというと、「かたくなったもの」は「かたまり」と言いますが、「軟らかくなったもの」を「やわらかまり」とも言わず、「難しくする」を「むずかしまり」などとも言わず、いずれも音読みのほうが短くて扱いやすい傾向があります。

を「ナン」と読むのは慣用音で、古くは「ネン」または「ゼン」と読むとされます。古い例で “軟障”(ゼンジョウ)などがあります。しかし現代日本語の熟語では “軟弱”(ナンジャク) “硬軟”(コウナン) “軟体”(ナンタイ) “軟骨”(ナンコツ) など 基本的に「ナン」の読みだけが流通しています。

は右側のつくりと同形で音が違うので会意字かのように見えますが、これはの略体であり、形声字と言われます。はカタカナだと「ネン」また「ゼン」などと読み、自由に動くさまを表わすとされます。(ケツ)はという別の字の略字であり、異なるルーツを持ちます。しかしいずれにせよ、同じ音を採用した 分かりやすい字がないので、しいて形声字として 他の字と合わせる 必要性は 薄いでしょう。

中国普通話だと「ルヮン」(ruan3) などとなり、これもかなり異なる音を持ちますが、日本人に発音がしやすいとは言えません。

この場合、「ナン」「ネン」「ゼン」の中間辺りから考えると、「ニャン」「ニョン」「デャン」「ヂェン」「ドェン」あたりがありそうですが、発音容易なのは最初の2つくらいでしょう。

が遠くなればは そのままでも大丈夫そうですが、“難解”vs“何回”vs“何階”vs“南海” 、“難問”vs“何問”、“至難”vs“指南” など 同じ   の組み合わせで いくつか衝突があります。

“難化” は やや受験用語的なところがあり、登場頻度は低めですが、ほかの衝突例からすると 別の読みを持つことは 有効です。

(難󠄀)に関しては (嘆󠄀)などと同じ 声部 𦰩を含んでおり、「タン」「ダン」「ナン」あたりから 音を離すと混乱が大きいと考えられます。

日本語の「ン」の表記は ナ行を構成する舌先を閉じる n(ン) のほかに、唇を閉じる m(ㇺ) 、舌根を閉じる ŋ(ク゚) のような表記も考えられます。

単語が子音で終了することを認めるなら nad(ナㇳ)、nar(ナㇿ) という表記も ありうるかもしれないですが、一般には促音化して「ナッ」にまとめられます。「ナンカ」を「ナッカ」「ナッケ」とするのは区別の上では一応の機能は果たせます。

ただ、語末に来た場合に「ナッ」ではうまくいかないため、この場合を想定すると nad の代用として「ナヅ」であれば、たとえば “至難”は「シナヅ」のようにして現行のカナでも表記可能になります。

直接関連しませんが、よく似た字でが「ナダ」であることから、が末音にダ行を持つことは多少は連想がしやすいかもしれません。

は日本語の一般的な読みとしては「ナン」のみですが、広東語や古い例を探ると 「ン」が m である、つまり「ナㇺ」である様子がうかがえます。 “南無”(ナム) など仏教用語など結合している例が現代にも残ることから、比較的この表記を使っても 記憶しやすい可能性があります。

訓読みに言い換えられるかの検討としては、“南下” は「みなみしも」とか「のうげ」という地名に現われますが、 ほかの読み方はされません。

「しも」は動作には用いられないので、「さがる」「くだる」「おりる」のいずれかを使って訓読みすると「みなみくだり」などとは言えそうですが、「ナンカ」と比べると長すぎて使い勝手が良くありません。「南下みなみくだりして」などとするよりかは 単に「みなみくだって」としても手間は同じです。

使用されている文字

  • [1]
    カ(漢音)/ホオ↗︎(he2:普通話拼音)/
    なに・なん(訓読)
  • [2]
    ケ・ゲ(呉音)/カ(漢音)/クヮ(旧仮名)/フア↘︎(hua4:拼音)
    ば-ける(訓読)
  • [1]
    ナン・ナ(呉音)/ナム(旧仮名遣)/
    ナン↗︎・ナ(nan2,na1:普通話拼音)/
    みなみ(訓読)
  • [1]
    (旧字)輭/ナン(慣用音)/ゼン(呉音)/ネン(漢音)/
    ルヮン⤻(ruan3: 普通話拼音)/
    やわらか(訓読)
  • [1]
    (旧字)難󠄀/ナン(呉音)/ダン(漢音)/ナン↗︎(nan2:普通話拼音)/
    むずかし・がたい・にくい(訓読)

この衝突語リストは、日本語に おいて同音異義語、あるいは文中に 単語をまたいで登場し、 聞き違いや カナからの変換時に誤変換を よく起こすものを ピックアップしたものです。

ここで示されている「処方せん」は、あまり一般的では ないものを 多く含みますが、 変換辞書に登録し 学習により上位にでるように することで 入力時の誤変換を減らす効果を期待できます。

一部特殊な拗音や別の文字種、変体かななど特殊な表記を使用する場合があり、 昭和から続く日本語のカナ<現代仮名遣い>の構成で 表記が認められていないものについては 現行の漢字変換ソフトそのままでは対応不能なものもあります。

将来的には 制度改定や 続いてシステムがアップデートされていくことが望ましいですが、キーマッピングの変更などでもある程度の調整が可能です。

その他の衝突語