“公認” “後任” は、どちらも「コウニンする」ということができる動作性名詞です。またどちらも「公認の何に某」の形で人や役職などと結びつきやすく、漢字変換誤りの起きやすい関係にあります。
どちらも「コウ」と「ニン」と読む2字の組み合わせからなります。
公と後は、“公開”vs“後悔”(コウカイ)、“公報”vs“後方”(コウホウ) でも対立があり、このどちらかは違う読みが使えるほうが便利でしょう。
認と任は、“新任”vs“信認”(シンニン)、“辞任”vs“自認”(ジニン) で衝突します。これらの字は 後や公に比べると熟語の数自体が 少なめで あるので 比較的衝突は起こりにくく、変更しても影響は小さいです。
公は「コウ」の他に “公家”(クゲ) の「ク」の音があります。訓読みでは「おおやけ」、また 歴史上人物などで “きみ” の読みが与えられることがありますが、常用訓読外になっています。
しかし「クニン」では “九人” となってしまうのであまり使い勝手は良くありません。「ク」と「コウ」の中間から考えれば、たとえば「クォ」あたりだと ローマ字で QOとすればよいので手間は小さくできます。
「_ォウ」の形を取る文字については、中国の音を参照すると多くが _ongの形です。このngに対して「ク゚」が出るように設定して kongで「コク゚」とするのもひとつの手です。
後の字には「コウ」の ほかに、「ゴ」の音もあります。
語頭では “後退”(コウタイ) “後期”(コウキ) “後編”(コウヘン) “後悔”(コウカイ) など「コウ」の読みがよく使われます。“後日”(ゴジツ) “後光”(ゴコウ) “後妻”(ゴサイ) など例外もありますが多くはありません。反対に語末では “前後”(ゼンゴ) “午後”(ゴゴ) “背後”(ハイゴ) “最後”(サイゴ) “食後”(ショクゴ) など「ゴ」が使われます。
後は訓読で「あと」「うしろ」があるほか、国後の「しり」の読みがまれに使われます。しかし「あと」は跡 痕があり、「しり」は 尻や “知り” と誤認の可能性があるので「うしろ」以外は使いづらい読みです。
この字は中国簡体字では同音の后が使われるので、中国の読みを参考にする意義は特にありません。
認(認󠄁)と任はともに「ニン」の読みがありますが、これらは呉音とされ、漢音は「ジン」です。人を「ニン」と「ジン」、日を「ニチ」と「ジツ」の読みがあるのと同じですが、ni と zi はかなり乖離があります。これは現代では中間に「ディ」(di)や「ロィ」(ri)が あるだろうと言え、古代の発音はそのような中間の発音であった可能性をうかがわせます。このことから、「ディン」「ヂン」のような音を当てることも考えうるでしょう。
任を「ジン」と読む熟語は現在ないのですが、その声符である壬については “壬申の乱”(ジンシンのラン)のように「ジン」と読むケースがあります。“賃金” の 賃に任の形で含まれ「チン」の慣用音があるほか、妊は「ニン」の読みがあります。壬は腹に荷物などを抱えた人を表わす字で、任 賃 妊はそのイメージを共有しています。ほかに廷(廷󠄁)・庭が「テイ」の読みで壬を含んでいるようですが、ここは本来は士ではなく土であるべき別の字で、無関係だとされます。
認(認󠄁)は忍(忍󠄁)を含んでおり、この字は Ninja を示すものとして世界的に有名でもあります。認の音を変えると両方変えないと覚えづらくなる可能性があるので、どちらかと言うと任より変更が難しいと言えそうです。
任が認と違う点としては、元の音が「ニン」でなく「ニㇺ」である可能性です。中古音でniəm とされ、また現代広東語では jamと示されています。
「ゴニム」という組み合わせは「くるしむ」のような動詞が存在しないことから、そのままでも漢字変換は問題なくできます。