“抗議” “講義” “広義” “公義” は いずれも名詞で、このうち “抗議” “講義” は「コウギする」と 言うことのできる動作性名詞です。抗
は「あらがう」、講
は「講じる」として ともに動詞として使用可能な文字で、それによって熟語としてもその動作性を継承しています。
後ろの文字が 義
または そこに訁
(ごんべん)の ついた議
で構成されているため、読み分けるのであれば 前の抗
講
広
公
の読みを整理する必要があります。
「コウ」の音から 直接的にスライド可能な範囲の音としては次のようなものが考えられます。旧仮名遣いから「カウ」「クヮウ」、撥音化の「コン」「カン」「クヮン」、その他「クオ」「クォウ」「キョウ」「ケオ」「ケウ」あたりが考えられます。
ただ「コン」や「キョウ」の普通の音では、「コンギ」は “婚儀”、「キョウギ」は “協議” “競技” など、 すでに使われている単語にぶつかるのでうまく機能しません。つまりどうしても特殊な音を頼る必要が出てくるということです。
講
の字は呉音漢音ともに「コウ」と読み、冓
を部に持つ会意形声字です。“構える”(かまえる)とは偏が違うだけで別の字ですが、冓
だけでも「かまえ」と 読みます。歴史的に 意味の詳細度の高い構
のみが用いられますが、講
もそう読んでもあながち間違いともいえません。
ただそうする場合、訓読みのほうが構
と講
とで衝突してしまいますから、何らかの近い別の訓読みをするほうが便利です。文字の構成通り言
を付け足しにていることによれば、「いい構える」「こと構える」のようになります。このやり方は例えば “描く” と書いて「かく」だけでなく「えがく」のようにより詳細な読みをもつもので、割と古典的なやり方です。
「ことをかまえる」は「問題を起こす」というニュアンスが含まれるので、こちらはあまり使えません。「言い」は動詞の活用が使えますから「言わ」が使えます。たとえば “講う” で「いわがまう」「いわがう」や、“講る”で「いわがめる」「いわぐめる」「いいかめる」のようにするのも一案です。
このように音読みしかない文字に新たな訓読みが与えられると、必要に応じて「講ギ」「講ギ」「講ギ」のようにして読み替えが可能になります。“私立”と“市立” を区別するのに 「わたくしリツ」「いちリツ」と言い換えるようなものです。
広
は 廣
の字の略字で、黄
の旧字の黃
から読みを受け継いだ形声字です。現在の広
は元の字のイメージが失われているため扱いが難しいですが、引き続き音は揃えておくほうが良いでしょう。廣
の字は旧来は合拗音であり、現在の中国普通話でも「クヮン」(guang3) のような読みです。
この字には “広東”(カントン) などでも知られる「カン」の読みも可能です。ただ「カン」は 官
完
漢
感
間
など すでに他の漢字が多数あるためこの読みがベストとは言えません。その意味では特に書くときには「クヮン」か「クァン」の方が便利です。ローマ字入力なら qan、kwan などの入力にマッピングすれば良く、kan と比べてさほど手間は変わりません。
抗
は訓読みで「あらがう」と読み、亢
(たかぶる)の部を持つ会意形声字です。似た字に木
ヘンの杭
の字があり、こちらは音読みでは同じ「コウ」ですが、訓読みに「クイ」の読みがあります。訓読みではあるものの “鉄杭”(テックイ) など音読みの語と結びつくこともよくあり、半ば音読み同然に扱われます。他の形声字で航
のなどもありますが、“航空”と“口腔” のようにこれも同音語を多く持つため、「クイ」の読みを _逆輸出_ して活用する余地があります。
公
の字は漢音の「コウ」のほか、“公家”(クゲ) の「ク」の呉音読みがあります。しかし「クギ」では “釘” や “区議” と 重なるので このままでは使えません。ここでは長音化して「クウ」とすれば、「クウギ」なら他に単語がなく、この単語に関して言えば回避可能です。