“感知”・“関知”・“完治” は いづれも「カンチする」と言うことのできる動作性名詞です。
この内 とくに “感知” と “関知” は利用場面が近く、意味的にも近いために誤変換と誤用が起きやすい組み合わせです。
“関知” は 課題などに人が関わり知っているかどうかを言う単語であるので、人が動作主でかつ対象が何か問題であるときによく使用されます。“感知” は 平たく言えば「気付いたかどうか」であり、動作主が人の場合もありますが、センサーや電子機器の場合もあります。
意味的な区別もさることながら、音も同一でアクセントの区別も明確ではありません。
“感知” と “関知” は 知
の字が共通しており 読みカナを区別するには感
と関
の読みを変える必要があります。
関
の旧字体は關
で、この字は古くは合拗音で「クヮン」と読まれ、中国普通話でも「クァン」(guan1) の読みを持ち、「カン」(干
や感
など)とは別のものです。
感
の字は「喪失感がある」のように任意の語句の末尾に接続するほか、「隔世の感がある」「やってしまった感がある」など単独でも用いられ、かなり広範に利用されます。読みを変更すると影響が大きいと考えられます。
可能性としては、同じ部を用いる減
の字があることから、この読みの「ゲン」を借りてくることが考えられます。この場合は「ゲンチ」では “現地” や “言質” などと重なるので、中間をとって「ギャン」(gen + kan → gean)あたりになろうものと考えられます。
そのほかに広東語の音などでは「カン」でなく「カㇺ」(kam)とされ、表記上はこれも1つの可能性でしょう。日本語の発音上、唇を閉じる「ㇺ」と、閉じない「ン」に表記の差は付けませんが、英単語で n
とm
を書き分けている例は ごく普通ですから 音声の聞き分けは難しいものの入力の補助としては有用な可能性はあります。
言い換える場合、「関知する」には「関わり知る(かかわりしる) 」と訓読で つなげる方法があります。
主語がセンサーなどの場合 “感知” よりかは “検知” を使うほうが手っ取り早い可能性があります。主語が人なら「覚知する」「察知する」という言い方もあります。
“完治” は病気やケガの治療が完了するということを言い、話題としてそれらが無いときにはまず登場しません。しかし “完治” をよく使用する職種や立場にいれば、ほかのカンチが邪魔になるかもしれません。
完
は元
を含んでおり、こちらは「ゲン」または「ガン」と読みます。この元
の字は中国の人民元のことを指す字として「ユァン」(yuan2)の音とともに世界的に知られます。完
自体は中国読みだと「ワン」(wan2)で、うねりのない今の「カン」の読みがむしろ特殊です。この字も関
と同じくどちらかといえば古くは合拗音「クヮン」であるとされ、現代の中国読みでは先頭のk音が脱落したと見ることができます。
治
には「チ」のほかに「ジ」の読みもあります。これが使われるのは “明治”(メイジ)・“退治”(タイジ) など 少数です(固有名詞を除く。“鍛冶” の冶
とは別字)。しかし「カンジ」では “幹事” や “漢字” とかえって紛らわしいため使用できません。“治安”(チアン) や “自治”(ジチ) など大半の熟語での読みは「チ」なので、「ジ」という読みをやめ、濁音としては「ヂ」の方を用いることも考えられます。
“完治” とよく似た “全治”(ゼンチ) という単語もあり、ケガの回復に関しては こちらが適している場合もあるでしょう。“全治” は “前置” と重なっていますが、文法の話をしない限りは衝突せずに済みます。
完
の字にはcomplete や fullという対訳がされ、「フルリカバー」「フル回復」ということもできるでしょう。
「カンチ」で変換すると 他に名詞としては “寒地” “乾地” なども出てきます。これら 文字で読むのには意味は通じますが、入力時や音読される可能性のある原稿には “寒冷地”・“乾燥地” のようにした方が早いでしょう。学術的な用途以外では無理に使用する必要がないと見られます。