かんすい

  • 冠水
  • 完遂
  • 潅水(灌水)

処方せん

冠水
クァンスイ
完遂
カンツイ
潅水(灌水)
みずやり/ゴンスイ/カンチョイ

解説

“冠水” “完遂” “潅水”(灌水) は、どれも「カンスイする」と読むことができる動作性名詞です。

“潅水” は 水を注ぐことで、とくに植物などに水やりをすることを言います。農業など水やりのための装置を「潅水装置」「灌水設備」などと呼び使用されます。

“完遂” は 目標などを 完全に遂げる ことを言い、ビジネスや戦略的な行動その他の計画について、広い分野で使用される単語です。

“冠水” は 農業用地や道路など窪地に水が溜まって使用不要になることを言い、天候を取り扱うニュースなどで使用されます。Web上で見ると これが他の単語より5〜10倍程度 登場頻度が高いです。

“冠水” と “潅水” に 関しては が共通しているので、読みで分けるならを分ける必要があります。しかし この2つは分野が異なるので 同じ文書ではどちらかしか使用されません。

“完遂” と そのほかだけが一般的にはぶつかりやすいと言えます。組み合わせとして2つしかありませんので いずれかを ンスイ として語頭にアクセントをつければ口頭ではクリアできます。

“完遂” は「カンツイ」と読まれることもあります。

は「スイ」が昭和以前の正しいとされる音読みであり、「ツイ」は “遂に” と書いて「ついに」と読む読み方が あるので、これと混同したものの可能性があります。ちなみに “終に” と書いても「ついに」と読むこともできますが、いずれも常用漢字表外なので公的には使用すべきではない表記です。

しかし現行で「カンツイ」は複数のシステムで漢字変換可能な読みであり十分通じます。こちらを優先したほうが有効な可能性が高いです。「カンツイ」の同音語に “環椎” という単語もありますが、これは首の骨の一部を指す医学用語で 一般的な文書では めったに現れません。

を含みますが、このは大きなイノシシや豚の祖先で食肉用の獣を指し、それを狭い道に追い込んで捕らえることをと言います。だけで使用されることはなく、基本的に“隊列”(タイレツ) のや “墜落”(ツイラク) ののように何か別の文字の一部となります。いずれも「スイ」ではありませんから、この読み方にこだわる必然性は薄いと言えます。ただし 中国普通話では「スイ」(sei)

音読みで「スイ」と読む字は 代表的なもので があり、「ツイ」は  などですから、どちらかと言えば「ツイ」の方が少なく衝突しにくい読みであると言えます。

 と  は  は、いずれも古くは合拗音で「クヮン」と発音する漢字です。よって 合拗音かどうかで区別するようなやり方はあまり適してはいません。

また は どちらも中にを持つ 形声字です。には「ゲン」「ガン」の読みがあり、現代中国語だと「ユァン」(yuan2) なので、音としては 多少のズレがあります。

にはが含まれますが これは手で帽子()を持つことを示し、の方に属しているものではありません。しかしの使用頻度に比べて圧倒的に少ないですから、これだけ離れていても仕方がない部分もあります。

どちらかと言えばが重複の多い「カン」の読みに合流することが問題が多く、“完了”vs“官僚”(カンリョウ)、 “完全”vs“敢然”(カンゼン)、“完走”vs“感想”vs“乾燥”vs“換装”vs“間奏”(カンソウ)、 “完成”vs“感性”vs“歓声”vs“慣性”vs“管制”vs“官製”(カンセイ) など、衝突を起こしやすい読みです。

したがってを もとの合拗音「クヮン」に戻すか、または現代人の発音しやすい「キャン」や「ギャン」に 移動させるのが有効と考えられます。

 (旧字 )は(コウノトリ=)を声符としてもつ形声字です。   と同じ部を持ちます。コウノトリには クラッタリングというクチバシを叩き合わせてカンカン鳴らすことで威嚇や求愛する習性があり、発音はこのあたりに影響されてついたとも推測できます。この行動が強い自己主張や感情表現と意味的に結びついていると見ることもできます。また生息地が豊かな水源であることから、水を蓄えるという意味合いとも解釈できます。

()だけが「ケン」の読みを持ちますが、説文解字によれば黃華木を表わすとされ、これは秤に使用するものであることから、はかりごとをする立場を指すということになると言います。この意味を字形から知るのは 新字体であることを置いても かなり無理筋で、その遠回り具合から 読みが違うのかと思わせぶりですが、中国語のよみでは「キュァン」(quan2) であり、「ケン」ではなく、なかなか錯綜した字です。

が文字の配置からするとに近いことから、その音を借りてくることは解決策の1つとなりえます。とくに “権化”(ゴンゲ) や、“開権”(カイゴン) など仏教用語や、“権現”(ゴンゲン) など人名地名では「ゴン」の読みが複数存在しています。この「ゴン」を借りて “潅水” と書いて「ゴンスイ」とすると、衝突がなく効果的であると考えられます。

しかしながら意味の方からアプローチするとは違うとも言えるので、むしろ他の  との共通性を重視すべきとの見方もできます。そちらの解釈でなら、むしろ合拗音に寄せるほうが整合的となりますが、“声”vs“完成”vs“感性”vs“慣性”vs“管制”(カンセイ) に見るように、    のような 合拗音由来のものが多数ぶつかるケースも あることを考えると、  をまとめて動かすようなことは 問題が大きくなる可能性があります。

そのかわり、を動かす ことも考えられます。は、 尿 などに含まれますが、基本的に音を共通としていません。よって音を変更しても他の形声音との整合性を考える必要がありません。

は中国語の読みを借りると「シュイ」(shui) であり、日本語では “首位” “主意” などの語があることから 発音に困るもので無いことは明らかです。ただ これだと 漢字変換の上では「シュイ」と読む他の語と重なってあまり使い勝手はよくありません。近い音としては「チュイ」「チョイ」などが考えられます。「チョチョイのチョイ」などという言葉もあるくらいですから「チョイ」は十分 有効な選択肢となりうるでしょう。

使用されている文字

  • [1]
    カン(呉音・漢音)/クヮン(旧仮名遣)/クァン(guan:普通話拼音)/
    かんむり、こうぶり(訓読)
  • [1]
    カン(漢音)/ワン(wan2:普通話拼音)
  • [2]
    スイ(呉音・漢音)/シュイ(shui3:普通話拼音)/
    みず・み(訓読)
  • [1]
    灌(旧字)/カン(呉音・漢音)/くわん(旧仮名遣)/クァン↘︎(guan4:普通話拼音)/
    そそぐ(訓読)
  • [1]
    遂󠄂(旧字)/スイ(漢音)/スイ↗︎(sui2:普通話拼音)/
    とげる(訓読)

この衝突語リストは、日本語に おいて同音異義語、あるいは文中に 単語をまたいで登場し、 聞き違いや カナからの変換時に誤変換を よく起こすものを ピックアップしたものです。

ここで示されている「処方せん」は、あまり一般的では ないものを 多く含みますが、 変換辞書に登録し 学習により上位にでるように することで 入力時の誤変換を減らす効果を期待できます。

一部特殊な拗音や別の文字種、変体かななど特殊な表記を使用する場合があり、 昭和から続く日本語のカナ<現代仮名遣い>の構成で 表記が認められていないものについては 現行の漢字変換ソフトそのままでは対応不能なものもあります。

将来的には 制度改定や 続いてシステムがアップデートされていくことが望ましいですが、キーマッピングの変更などでもある程度の調整が可能です。

その他の衝突語