まず 「用いない」の“不用”と「要らない」の“不要” で「ヨウ」が重なっているので、どちらかの音を逃さないといけません。
用
の字と要
の字は、他に “重要”vs“重用”、“要旨”vs“用紙”、“要領”vs“用量” や “要人”vs“用心” の組み合わせでも衝突する、相性が悪い字です。
ここでは要
の旧仮名遣いである「エウ」とするのが一番簡単で、次に拼音からとって「ヤオ」とするのが第二候補となります。
不
の字については カタカナのフ
と ひらがなのふ
の両方の字の由来でもあり、非常に多くの熟語もあるため、これを変更するのは得策とは言えません。そのままに しておくべきでしょう。
“扶養”という単語は「扶養家族」「扶養親族」のような特定の組み合わせで定期的に登場する単語ですが、“不要” と聞き間違えると何か不穏な表現になるため、はっきりと違う音にしておくことが好ましいと考えられます。
いわゆる俗語の“化学”を“科学”と分けるために「ばけがく」と読んだり、“私立” を「わたくしりつ」と読んだりするようなものです。
養
の字と揚
の字は、いずれも旧仮名遣いにしても「ヤウ」、拼音にすれば「ヤン」で第2声と第3声との違いはありますが日本人には関係ありませんから、ひとまずは頻出する熟語の組み合わせで解消することを考える方が近道と言えます。
揚
の字は “揚水”vs“用水”、“掲揚”vs“形容” などの同音語があり、養
の字は“養子”vs“用紙” や “教養”vs“強要” など同音語がありますが、養
の字の方がわずかに衝突の度合いが多いです。
また養
の字は 𦍌
の字部を持ちますが、これがそのまま“羊水”として“揚水”の同音語であったり、他にも“海洋”と“潰瘍”、“仕様”と“使用”のように 発声の𦍌
の部分が他の文字と衝突を起こしていることがわかります。
このためどちらかと言えば 𦍌
を持つ字一式を「ヤウ」または「ヤン」に調整した方がメリットは多いと考えられます。
揚
については熟語も多くないことから、積極的に変更はしなくてよいと見られます。音の衝突が多いだけでなく、文字の外見が場
とも似ていて紛らわしいため、将来的に新語を構成することもあまり無いと考えられます。
扶
は通常は「フ」と読み、常用外の呉音では「ブ」(bu)の読みがあります。
“扶養” の他に “扶助” などの熟語がありますが、いずれも「フ」としか読まないので「ブ」が使われることはありません。
また “扶養”を単に「ブヨウ」としてしまうと、“舞踊”と紛らわしいのでこの組み合わせはあまり良くありません。“不用”と音をさらに離すために、「ブ」を用いるとしても、やはり養
の変更とセットで取り扱われる必要があります。
まとめると“扶養”には「フヤウ」「フヤン」、「ブヤン」「ブヤウ」あたりが考えられます。ただこれらは変換ミス回避には都合が良いですが少し発音がしづらいですので、長音化して「ブウヤン」「フウヤン」「ブウヤオ」あたりを使う方が良いかもしれません。
のこる浮
の字は もとは「フウ」とでも書くべき文字ですが、慣用音として「フ」が定着しています。
“浮揚” の他に “浮動票”と“不動票”や、“浮上”と“不浄”、“浮沈”と“不沈”のような形で、不
の字との衝突が他にも見られる文字です。
不
の字は先にも説明した通り 動かしづらい文字ですから、浮
の字の音を変える動機になります。
古い読みの「フウ」を使うのと“浮揚”は「フウヨウ」、“浮上”は「フウジョウ」となり、ひとまず回避可能です。
別案としては「浮く」を形容するプカプカ、プクプクという擬態語のイメージがあるため、「プ」(pu)を使うことも考えられます。
「フウ」では風
・封
の字と音が重なるので、極めて稀ながら “風葉” のような言葉と誤解され得る可能性がありますが、「プ」であれば他の日本語と重なる可能性はほぼゼロにすることができます。