“実相”・“実装” は ともに一般名詞です。
“実相” については 実際・真実の状態を 表わす語で、 こちらは 動詞にはならない 単純名詞です。
“実装” は「ジッソウする」ということができる動作性名詞で、何かの仕組みを盛り込んだり部品を装着して実用できるようにするといった意味で使います。
いずれも やや堅めの文章で登場する語ですが、意味は まったく 違います。この2つは「○○なジッソウがある」「ジッソウとして○○することがある」「社会的ジッソウ」などといった 似たような構文を取ることが しばしばあり、誤変換や 聞き違いが ときどき起こり得ます。
“実装” については 英語で implement (動詞) または implementation (名詞) と言い換えるほうが 手っ取り早いこともありますが、長いのであまり使い勝手は良くありません。
“実相” については「ジツのソウ」として 分けて言うと 問題ないかもしれませんが、これも文脈によっては つなぎが悪くて 使いにくいときも あるでしょう。
この2つを読み分ける場合、前の実
の字が同じなので、後ろの装
(裝
)と相
の読み方を 変える必要があります。
この2字の組み合わせが直接衝突する例はほぼ無くて、かわりに “装丁”vs“想定”(ソウテイ)、“換装”vs“感想”vs“完走”vs“間奏”(カンソウ)、“変装”vs“返送”(ヘンソウ)、“相似”vs“掃除”(ソウジ)、“相当”vs“総統”vs“掃討”(ソウトウ) 、“相対”vs“総体”vs“早退”vs“草体”(ソウタイ) のように、微妙に ずれたところで衝突が起きています。
ここで、装
は壮
を部分に含み、相
は想
に含まれるという関係があり、音が共通していることから、もし変更するのであれば 覚えやすさのため 合わせて変更すべきだという考えが出てきますが、ひどく絡まっていて なかなか難しい関係です。
装
と相
は「ショウ」という別の読み方をそれぞれ持ってもいます。“衣装”(イショウ) や “首相”(シュショウ) などで使われます。ただし相
を「ショウ」と読むのは 基本的に大臣など 行政の責任者を言うので基本的には「ソウ」です。しかし、「ジッショウ」としても “実証” があるので どちらにしてもこの読みは使えません。
よって 中国の別の時代の読みを持ってくるか、古典から取り込むかという選択になります。通常「ソウ」とか「ショウ」のように「ォウ」の形を取るものは、中古音や北京語をひくと -ang のことが多いですが、相
は xiang (シャン)、装
は zhuang (チュアン) で 合致します。ng は 日本語だと「ン」の異音と とらえるので、現代的には「ウ」の かわりに「ン」を使っても良いと言えます。
「チュアン」は少し発音が日本語としては難しいので、「チョン」や「チャン」が考えられますが、「じっちゃん」だと お爺ちゃん のようになるのでここでは もとの「ソウ」「ショウ」に寄せて「チョン」のほうが 扱いやすそうです。「ショウ」と「チョン」のさらに間を取って「ション」もありえます。「チャウ」もありえますが、「いじっちゃう」などのように動詞の末尾のようにも聞こえてしまうのでやや候補としては下でしょう。
相
のほうは、xiangから「シャン」を持ってきて使うのが早道です。読むのは「シャンプー」などの語がすでに一般的なので発音に困ることはないでしょう。「ソウ」の「ウ」だけ持ってきて、「シャウ」とするのは次の候補として考えられます。