単語の末尾につく接尾語として「カ」です。
「〇〇化を防ぐ」「〇〇下で進む」「〇〇可になる」のようにして、いろいろな単語の末尾に現れては新しい言葉を作ることができます。
また「無駄か と思ったが」「善か 悪か は」のように、疑問を表し、別の助詞の前に来る ひらがなのか
とも相性が悪いことから、基本的に全て別の音を用いる方が好ましいということになります。
化
は抽象化・合理化・共通化・高画質化など形容動詞、また暴徒化・神話化・デフレ化・ブラックボックス化・タコツボ化のように名詞やカタカナ語の後ろにも現れ、さらには“見える化”・“伝わる化” など可能動詞とも接続します。
漢字もですがカタカナ語は特に厄介で、それ自体もともと英語など外国語をルーツとしているため、動詞か 形容詞か 名詞か というような 品詞の判別が難しく、また新語を作りやすいという性質もあって、IMEが自動で適切な変換候補を選択することは ほぼ不可能です。
下
は基本的に名詞の後に続き、その名詞は「〇〇政権下」「〇〇支配下」「〇〇大戦下」「〇〇制度下」「〇〇状況下」のようにして何か大きな力や上位の仕組みを表すような特定の語と強い結びつきをもつことから、比較的 文脈により候補から外しやすい語ではありますが、「デフレ下」や「プライベートネットワーク下」のように特に新しいカタカナ語や一部分野の専門用語に続くとそのような判定が困難になります。
可
に関しては「送信可」「宅配可」「焼却可」「リサイクル可」のように、主に動作性名詞の後ろに付きます.とはいえこれも「リモート可」と「リモート化」のように名詞・動詞・形容詞の区別困難なカタカナ語につくと一意に判断することはできません。
一般にカタカナ語のもとになる外国語の名詞は、例えば英語なら a や the のような冠詞の後に続くため判断しやすいですが、日本語でカタカナになるとそれが失われます。
を
・の
・から
のような助詞がその役目を負います。しかし複合語になるとその機能を持つ代役がありません。(於世界大戦下や、用送信可のように品詞を示す接頭語でも使わない限り)
ここで扱う「カ」のうち、下
・可
は純粋な「カ」ですが、化
・課
・禍
・科
の4つは もともと合拗音「クヮ」を用いていたものです(部首の共通する花
・貨
、果
、華
、渦
なども同じ) 。音読み では まず この2系統に分けることができます。
下
については 会話や口に出して読むときには「政権下では」と言う代わりに「政権のモトでは」と言い換えるのが一番わかりやすいでしょう。
文章で硬めのものでは “の” を 挟むと見た目に弱々しいことから、省きたいこともあるでしょう。これは “の” が無いときにも「か」で変換せず 常に「もと」で変換すると良いです。
ただし“落下” “降下” “陛下” など「カ」の音を持つ単語もあり、そう読むクセが抜けない可能性があります。これには「ラクゲ」「コウゲ」「ヘイゲ」と「ゲ」を用いる習慣とすると 衝突を かなり 減らすことが できます.
可
に ついては “可能” と書き換えるのが一番簡単です。ただしこれもスペースの都合などで能
を省きたいこともあります。
また「館内は一階ロビーでのみ飲食可といたします」のような表現で「可能」と書くと わずかに丁寧さの度合いが落ちるようなニュアンスがあります。能
の字が、規則で認められているかではなく 人の知能や技能を指すような意味合いを含むからです。
可
は 現代語の「〇〇するべき」にあたる古語「〇〇すべし」に対し「す可し」の「べ」の読み方があります。これと似た使い方をする単語で「無し」「無き」という語がありますが、これは “無” と1字で書いて「なし」と読む、送り仮名の省略が行われます。ですから「べし」を送り仮名を省略して “可” と1字で書くことがあっても良いと考えられます。
科
は主に病院の 内科・外科・小児科 など専門科や、医学科・文学科など学科を指して使い、研究のカテゴリーにあたる文字です。
“科料”(カリョウ)や “科す”(カす) の科
でもありますが、これは米を升(マス)で 計る様子を表していて、罰や命令を与える意味合いも同時に含みます。
課
についても “課す”(カす) と書くと同時に 営業課・経理課など使っている業界分野は違いますが似たような使われ方をします。
科
と課
は どちらも合拗音ですから「クヮ」または「クァ」が使用できますが、もしかすると どちらかの漢字は不要な可能性があります。強いて分けるなら科
の方は「しな」「とが」という読み方があり、これを使うことができます。
変換では訓読みが便利ですが、口頭では音読みの方が現行の言い方に近く、わかりやすいかもしれません。その場合 昔からあって衝突のない内科や外科などは良いとしても、「リハビリテーション科」とか「スポーツトレーナー科」のような細分化されて年々新しく増えるものについては、“専科” “特科” や “診療科” のように汎用的で衝突のない語句を使った方が変換も容易で、また知識のない聞き手にも分かりやすい可能性があります。
化
は「カ」の他に“権化”(ゴンゲ)や“変化”(ヘンゲ)の「ゲ」や“化儀”(ケギ) などの「ケ」を呉音としてもちます。また訓読みで「化ける(ばける)」といい、特に “化学” と “科学” の文脈で「ばけがく」と送り仮名無しに読むことがあり、広く浸透しています。
少子化を「しょうしばけ」などと言うのはオバケのようであまり聞こえが良くありません。その意味では音としても近い「しょうし け」の方が理解はしやすいと思われます。しかしこれは 家
や毛
と紛らわしくなります。
化
は合拗音であることから「クァ」ともなりますが、これでは他の課
や科
などとも重なりますから、呉音「ケ」に 近い「クェ」を適用すれば他の語との衝突は生じません。
もう1つは現代の中国語に近い「ファ」を用いることも考えられます。化
は拼音ではhua4で、このh音は正確には「ク」と「フ」の中間的な音でfとは異なりますが、日本語にない音のため 大抵「フ」と書きます。(“悪化”などクで終わる語なら「アッカ」の代わりに「アㇰファ」のようにして前の字に吸収させることは一応は可能です)
禍
については2020年になって接尾語としての頭角を現したもので、将来も使われるかは判然としませんが、合拗音の「クヮ」(kwa)あるいは現行でも入力の容易な「クァ」を用いるか、一過性の流行語として無視するかの選択となります。
「コロナ禍」の用途では無理をせずそのまま単語登録するか、「コロナ災禍」「コロナ疫禍(えきか)」「コロナ病禍」のようにもう少し日本語の熟語として自然に使用可能な言い換えを使う方が適切とも考えられます。