しょくざい

  • 食材
  • 贖罪
  • 色材
“食材” と “色材” は 普通名詞、
“贖罪” は 「ショクザイせよ」などと言うことができる動作性名詞です。

処方せん

食材
ジキザイ/チキサイ/ジョクザイ
贖罪
ジョクザイ/ミョクザイ/ショクジャイ
色材
シキザイ

解説

“食材” とは 食べられる材料を表わす 普通名詞です。“贖罪” は 罪を あがなうことを言う 動作性名詞です。

“色材” は 色をもたらす材質を呼ぶ普通名詞です。この単語は「ショクザイ」で漢字変換して出てくることが ありますが、紛らわしいせいか「シキザイ」の読み方のほうに 退ぞいていますので、実質的には同音から抜けているとも見えます。

は常用漢字外であるので 公共的な媒体では フリガナが必要です。まれに やや堅めの 文章に登場する文字です。右側は𧶠が用いられています。

の字と似た字に、が あります。これらは 常用字の「ゾク」や「ドク」の旧字体で、基本的に新字体が使われます。

ほかにという字があります。この字は “冒涜ボウトク”の 旧字体です。

あるいはという形は 金銭や財物を動かすことを示します。これは「バイ」や「バイ」「マイ」という読みを持ちます。も同じですが これにを加えるとになります。ここでのの原字で、人が手足を前に出すのを 上から見た さまを表わし、商品が出ていく様子に通ずるとされます。

から攻めていくと、が なぜ「ショク」となるのかは謎です。中国普通話だと「シュウ」(shu2)となり、こことも音が一致しません。ただは「ドク」の他に読点トウテンなどの「トウ」という読みもあります。このタイプは末音の「ク」が入声の dok で、k音が 中国北部で衰退したものと見れば だいたい説明はつきます。しかし「ク」を除いたにしても「バイ」「マイ」には遠すぎます。

これらの字は大きくすると こうなります。

賣 續󠄁 讀󠄀 續 讀 贖 𧶠

環境依存文字なので 同じ見た目に ならないかもしれませんが、 中央が 網 を意味するのものと、のものがあります。 (lang=zh-Hant を指定したり中文繁体字にすると すべてに なったりします)。は ヒトの鼻の穴を 表わす文字ですので 意味としては誤りですが、ここでのは、の略型や古字だと解読されます。つまり +でなくて、++だということです。

 などがを含むけれども 音が 大きく異なるのは、ルーツの異なる複数の字が 合流してしまったせいで、もとは 別の字だとすれば話が変わります。この場合 新字体が間違って作られたのだということであって、再考を要します。どこかの新聞が 古い字体を使い続けるのも あながち否定できません。

別物だという考えに基づけば、の「バイ」「マイ」を そのまま参考にするのは 正しくなかろうということになります。𧶠はどちらも売るという意味を含意しますが、違うのはの字のように《物事の連続》という観点があるかどうかということです。の場合は 言葉が続くことを示します。ならこれは いつまでも罪が拭えない状態と考えることができます。は「けがす」と読みますが、消えぬケガレが 染み付くことと考えられます。

の異体字で、と似ているので、これに偏を加えたを使い「ショウ」の周辺の音でまとめてしまえば良さそうな感じはあります。字形をどうすべきかは同音衝突と別の議論ですので ここではこれ以上深くは追いません。ちなみに簡体字だとなので見る影もありません。

が「ドク」、が「ゾク」で、いづれも濁音である点からすると、も濁音「ジョク」にずらすことは考えられます。「ドク」は  、「ゾク」は 、「ジョク」は (常用外) くらいなので、「ショク」が     などあることからすれば 濁音化は有効な回避策です。

反対に とまとめてしまってもよいだろうとするなら、中間音を探って「ミク」「メク」「ミョク」「ビョク」あたりが候補となりえます。末音「ク」は和語の “く” とか “く” のような動詞と紛らわしく、「ク」の前の音は拗音であるほうが 区別しやすくなります。「ミョク」「ビョク」は同音衝突可能性 かなり低い選択肢となります。

は 人間の口と食品を乗せた台を合わせた 会意文字で、その音は他の文字と共有されていません。たまに「人に良い」などと言われることがありますが、そうではないようです。

の字には食󠄁という もう1つの字体があり の上部が水平のとなっています。字源としてはこちらが正しいとされ、中国繁体字のフォントでは こちらが正になります。(日本語環境では異体字セレクタU+E0101を必要とします)

「ショク」の読みは  など幅広い字と 衝突し、例としては “洋食”vs“養殖”、“食事”vs“植字”、“草食”vs“装飾”、“食器”vs“織機”、“一色”vs“一食”vs“一触” などがあります。は “一食” のように助数詞としても 使用できるので、数字の後ろでは常にと衝突します。「3ショクの そうめん」などと言うと 色か 食数か 区別できません。

の字には「ジキ」という読みもあり、“餌食えじき” “乞食こじき” “断食だんじき” などの例があります。「イ」とか「シ」という読みもありますが、基本的に 中国系の人名にのみ現れる、一般名詞で日本語には登場しません。

「ショク」の「ク」あるいは「シキ」の「キ」は、古代中国語の入声 つまり 子音k で終わる文字であり、もともとは母音が無かったと見られる文字です。この状態は 英語の inkを「インク」と「インキ」の2つの読みがあるようなものです。つまり少なくとも 後ろの「キ」か「ク」かは、実はどっちでも良いという話になります。

散発的な衝突の発生と、会意字であるという点からすると、比較的 音を変更しやすい文字であると言えます。ただしの2字が 形声字としてを含むため、変更するならセットで変えたほうが良いでしょう。の字はこれも常用漢字ではないので 大抵のケースではの字で代用されているため、実質だけが 影響を受けることになります。

そのまま使えるという観点で「ジキ」という読みは有効です。この「ジキ」単独では “時期” “磁気” “自棄” と重なりますが、熟語になるとほぼ影響がありません。食堂=「ジキドウ」、食事=「ジキジ」 など、認識上の問題はほぼ無いと言えます。

ただ「ジキ」の読みは「ショク」に比べると 濁音化することによる忌避感を含む可能性があり、それは “乞食” や “餌食” のような語の語感に現われます。食に関する 表現としては 一定の清潔感が求められる場面も多いので、その意味では ややドライブして「チキ」や「ショキ」「シャキ」「シェク」あたりの清音の方が好ましいかもしれません。

罪と材

は ともに「ザイ」の濁音を持ち、この音を持つ字は 他に   が ありますが 比較的少数です。

の字を含む 会意形声字です。右の旁りの部分がのように五叉路のようなタイプと、右に突き出るものがありますが、日本語ではから生じたが 似ていて紛らわしいので 突き出る形が好まれますが、特に意味の差はありません。

は「サイ」と濁らず読むのに対し、は ほとんどの場合 濁音で読みます。同じグループにがあります。やや離れたところでの旁りも 同系とされますが、字形が異なるので合わせに行くほどでもないでしょう。

  は 中国普通話では およそ「ツァイ」(cai2) で音が共通しています。「ザイ」の方は少ないですが、「サイ」は 西など かなり数が多いため、3つ合わせて「ツァイ」に まとめるのは ひとつの対策になります。“天才”vs“転載”vs“天災”(テンサイ)、“才子”vs“祭祀”vs“妻子”(サイシ) などの衝突が 回避可能になります。

が同時に「ツァイ」に移動すると は 敵が減って  だけとなります。“現在”vs“原罪”(ゲンザイ)、“罪人”vs“在任”(ザイニン) などが残りますが、の方の熟語の登場頻度が かなり低いのでさほど影響はないと言えます。 “罪人” に いたっては「つみびと」と訓読みにすることもできます。

は 中国普通話を頼るとおよそ「ツイ」(zui4) となりますが、「ツイ」では  など多くなるので変えないほうが良いです。強いてやるなら「ジャイ」あたりなら日本人でも発音しやすいでしょう。

使用されている文字

  • [2]
    ザイ(呉音)/サイ(漢音)/(cai2:普通話拼音)/
    き・もとき・まるた(訓読)
  • [1]
    ザイ(呉音)/ズイ(zui4:普通話拼音)/
    つみ(訓読)
  • [1]
    ショク(漢音)/シュウ(shu2:普通話拼音)/
    あがなう(訓読)
  • [1]
    (旧字)⻝/ジキ・イ(呉音)/ショク・シ(漢音)/
    シイ↗︎(shi2)・シ↘︎(si4)・イ↘︎(yi4:普通話拼音)/
    たべる・くう・はむ(訓読)

この衝突語リストは、日本語に おいて同音異義語、あるいは文中に 単語をまたいで登場し、 聞き違いや カナからの変換時に誤変換を よく起こすものを ピックアップしたものです。

ここで示されている「処方せん」は、あまり一般的では ないものを 多く含みますが、 変換辞書に登録し 学習により上位にでるように することで 入力時の誤変換を減らす効果を期待できます。

一部特殊な拗音や別の文字種、変体かななど特殊な表記を使用する場合があり、 昭和から続く日本語のカナ<現代仮名遣い>の構成で 表記が認められていないものについては 現行の漢字変換ソフトそのままでは対応不能なものもあります。

将来的には 制度改定や 続いてシステムがアップデートされていくことが望ましいですが、キーマッピングの変更などでもある程度の調整が可能です。

その他の衝突語