“推移” の語句は 人口や 経済や 企業の収益、気候のような環境分野など、さまざまな統計指標に対して用いられる単語で、業界分野に関わらず多方面で用いられます。“収益推移” のような形で別の単語と結びついて名詞複合語を作ることも良くあります。
“水位” は 基本的には水の貯まる深さや容量なので 環境分野や 貯水タンクのような 液体を扱う設備に関わるなど ある程度この単語を用いる 職種や業界が限定されます。まれに “水位” を “水準” と同じような感覚で 水以外に対して比喩的に用いられるケースもあります。
“水位” を日頃 扱わなければならない環境では “推移” は「する」が後続しない限りは衝突可能性があります。
位
の字は “水位” に限らず、“順位”(ジュンイ) “一位”(イチイ) “五位”(ゴイ) “十位”(ジュウイ) “各位”(カクイ) など他の語でも末尾につくことが多く、 さらに “順位”は“准尉”、 “一位”は“一意”、“五位”は“語彙”、“十位”は“獣医” と衝突しています。語頭に来る “位相”(イソウ)、“位置”(イチ) も “移送” や “一”(1) と衝突し、かなり問題の多い読み方であると言えます。
位
は 「人が立っているところ」というそのままの意味の会意字で、読みは 偏と旁のどちらの音とも無関係です。この字を含む 莅
という「リ」と読む字もありますが、常用漢字ではない上に音も違うため、連鎖的影響はあまり考える必要は ありません。
位
は古語においてワ行の ヰ(ゐ) の字が当てられ、また現在の中国普通話でも「ウェイ↘︎」(wei4)の発音のため、現在の「イ」の読みには正統性がありません。つまり寛容な立場では「ウィ」「ウェイ」「ヰ」のどれを使っても良いということになります。ただし語末の「ウィ」は発音が分かりづらいため、「ウィー」「ウィン(ヰン)」「ウイ」のどれかの形で 1拍 多く取る方が聞き取りには向いていると考えられます。
水
のほうは中国音に寄せると「シュイ」(shui3) ではないかとなるのですが、この文字は単独で 水曜日 の略号として広く使用されており「スイ」といえば水
の字を指すと言って良いくらいのものです。逆に「シュイ」と言うと ふつう “首位” に間違われるので 良い置き換えとは言えません。
推
の字は扌
(てへん) に隹
(ふるとり) を合わせた形声字で、「スイ」の音はこの隹
から引き継いだものです。しかし同じように形声字の 椎
は“脊椎”(セキツイ) など異なる読みがあり、堆
は“堆積”(タイセキ) などこれも違う読みを持ちます。隹
(羽の短い鳥)を持つ字は𠂤
(土の塊)によって代替されたり混同される様子があり、読みの正統性は必ずしも 明確ではありません。中国音でもこれらの字は形声字としながらも音は割れています。
推
は中国普通話だと「トゥイ」(tui1)となり、日本の「スイ」とも「ツイ」とも異なります。日本語の「ツ」の発音は時代と地域や文脈により一定ではないため、昭和平成の書き方なら「トゥイ」が正しくても、上代日本語で言えば「ツイ」が妥当な表記かもしれません。
あるいは tui を tu + i ではなく t + ui であると解釈するなら、ui を唇音 wi に よせて「トヰ」という表記も使えるかもしれません。