“支持”・“指示”・“師事” は、どれも「シ」と「ジ」の音を持つ2字の組み合わせから成り、いずれも「シジする」と言うことができる動作性名詞です。
“師事” は 誰か師に教わり事を成すという意味の単語ですが、経歴などを書くような場面でしか現れず、日常的な単語ではありません。
一方で “指示” は「指し示す (さししめす)」ことを言いますが、業務上の指示について言ったり、何か作業を進めるときに見る “指示書” や、“指示器” のような機器の名称など様々な場所で用いられます。
“支持” は 「支え持つ (ささえたもつ)」というふうに読めますが、単純に柱のように何かを支えることを言う場合もあれば、政治理念や何か特定の志や それを持つ団体を肯定的に認めたり実際に援助することを言ったりします。
この “支持” は特に 世論調査によって 政権や政策の “支持率” という数値に まとめられて 定期的にニュースなどで登場し、広く一般的に普及する単語でもあります。一般的な事務作業でこの単語は さほど多くは登場しませんが、マスコミや政治に関する話題を扱うような業種ではこの単語の入力は度々必要でしょう。
登場頻度が低い “師事” はそのままでも良さそうですが、このうち後ろの 事
については “故事”vs“誇示”(コジ)、“刑事”vs“掲示”(ケイジ)、“堅持”vs“検事”vs“顕示”(ケンジ) など、いくつか他の単語でも同音衝突があり、この字の読み替えは有効です。
事
の字は 通常「ジ」としか読まれませんが、“好事”(コウズ) のように古い単語では 呉音の「ズ」が用いられることがあります。
示
は “示唆”(シサ)、“示準”(シジュン)、“図示”(ズシ) など、「シ」と読むケースがあります。よって “指示” は「シシ」と読むことが考えられます。
持
はほとんどの場合「ジ」の読みしか用いられませんが、“食い扶持” のようにごく限られた単語では漢音「チ」が用いられることがあります。この字は普通話拼音で 無声有気音chi2 で 強いて書けば「チㇶー」のようになりますが、だいたい「チ」に近いと言えます。
持
はまた寺
を持っており、これは待
や時
と同じく あるところに とどまることを示す 会意形声字の声符となっています。他に 等
特
痔
などもあって微妙に音が違いますが、歯ではなく tやdの舌を使う音の傾向があるように見えます。ゆえに表記上の問題だけで言えば ジ
の代わりにヂ
を使うほうが適しているとの見方もあります。
ここであげた「シ」も「ジ」も一拍しかないので対処しづらいですが、これを伸ばして「シイ」「シン」「シツ」「シキ」などにしてやると、もう少し分別しやすいものに成ります。ひねれば「シェイ」「シェン」「シェク」なども考えられます。発音でなく表記上の区別だけで良ければ「スィ」「スェ」のようにすることも可能です。「ジ」の場合はその濁音になります。
支
は 枝
技
肢
岐
妓
など多くの他の 形声字の 声符であり、中国普通話だと「チー」(zhi/ji) でほぼ一致します。日本語の音読みは「キ」「ギ」「シ」で多少ずれは あるものの おおむね似た音を 持っています。覚えやすさを重視して どれかに寄せるということも考えられますが、同時に “支持” “支援” “支配” “支柱” “支給” “支店” “支度” など熟語も多く 音の変更はなかなか難しい文字です。
ただこの字は特徴として、熟語の多くが語頭に支
を持っており、後ろに来るケースは “十二支” のような限られたものです。このような場合 「シー」や「シッ」のような形で 長音や促音にすると自然につなぐことができます。ただし促音の「シツ」は失
執
湿
の字と衝突して良くありません。たとえば “支配” を「シッパイ」と読めば “失敗” 、“支柱” は “失注”'(シッチュウ) となってうまくいきません。
指
は 声符で旨
をもつ形声字で、同じグループに脂
や詣
があります。音が一致しているのて動かすなら全部動かすべきです。でないと覚えやすさが失われてしまいます。
指
は “指示” の他に “指揮”(シキ) “指弾”(シダン) “指標”(シヒョウ) などの熟語がありますが、比較的語頭に来る傾向があります。しかし指
の声符である旨
は、“趣旨”(シュシ) “要旨”(ヨウシ) など 語末に現れやすく、この部を含む他の “油脂”(ユシ) や “造詣”(ゾウシ) なども語末に来ます。語末で「シツ」とか「シキ」など文字追加すると、別の単語と紛らわしくなり良くありません。
しいて動かすとするなら、「シ」の shi を sheにスライドした「シェ」などが有効と考えられます。この音は 昭和の現代仮名遣いに無い音であり、どの場所に持ってきても他の単語と衝突を起こしません。