“摂取”と “接種”と “窃取” は いずれも「セッシュする」として動詞になる動作性名詞です。
“窃取”だけは別ですが、他は “経口摂取”とか “予防接種”とか、医療や生命科学の分野でどちらも用いられるため分けておくと便利になる可能性のある語です。
摂
はとりこむ・とりいれるの意味で、旧字では攝
と書き、耳
が3つもあります。聶
では「ささやく」となりますが、この字には わずかにそれだけ という意味を持ちます。
この摂
の字を「セツ」と読むのは慣用音とされます。中語普通和拼音だとshe4で「シェウ」「シュウ」のような発音になり、日本の呉音漢音では「ショウ」とされますが、これは旧仮名遣いだと「セフ」となります。これがどこかであやまって「セフ」→「セッ」に化けた可能性が考えられます。
あるいはハングルでこの漢字には섭(sep:セブ)が当てられていることから、そちらからの流入も考えられます。“摂政”(セッショウ)の「セッ」の字でもあります。
取
の字は漢音で「シュ」と読みますが、他の読み方をする音読みの日本語熟語がありません。拼音だとquで「チゥウ」のような発音になります。
この字もよく見ると耳
がついていますが、右の又
は手でつかむ形を表しており、戦争で戦った敵の耳をちぎり取って見せると言う、なんとも恐ろしい行為から来ている会意文字です。
接
の字は“接待”の接
でもありますが、分解すると妾
に手
です。妾
とは元来 女の奴隷のことを示す文字で、女に入れ墨で印をつけたことの名残とされます。手を出すにしろ出されるにしろ あまり品の良い字ではありません。
この字は 音読みでは古くは妾
に同じ「ショウ」の読みがあり、また普通話拼音ではjie1となり「ジエ」のようになります。
「ショウ」を使うと “接待” は「ショウタイ」、“間接” は「カンショウ」となるので 別のところで衝突してしまうので良くありません。
種
は呉音の「シュ」が基本用いられますが、漢音は「ショウ」とされます。この音を使う熟語がないですが、旁の重
が「ジュウ」あるいは「チョウ」と読むあたりや“衝動”(ショウドウ)の衝
などに名残が見えます。
窃
は切
の字と見せかけて旧字では竊
と書き、穴に米と禼(足の多い虫)を合わせた字で、虫が巣の中に餌をため込む様子を表す文字です。音は切
と共通で「セツ」ですが、禼
の字を「セツ」と読むところからの置き換えです。
拼音だとqieとなり「チエ」のように発音されます。
試用頻度や熟語の数から考えると、「セツ」は接
>摂
>窃
で、「シュ」は取
>種
となるでしょう。
「セツ」の読みは説
節
切
雪
設
拙
泄
折
など多くあり、調整は有意義です。
ただ接
は“接触” “接待” “応接” “接地” “隣接” など多くの熟語があるものの、“接地”は“設置”と重なりますが、他は特に問題ありません。変更の必要性は弱めです。
摂
は “摂政”と“折衝”と“殺生”の衝突などもありますし、そもそも正統性に疑問がある読み方です。
“窃取” は窃
を「チエ」として「チエシュ」などにすると回避できます。ただこの語は「ぬすみ」などとしたほうが 分かりやすく、必要なケースは限られると考えられます。“窃盗”は「チエトウ」、“剽窃” は「ヒョウチエ」となります。
切
の読み方には 「お節料理」のように、「セツ」→「セチ」と読み替えるパターンもあります。“窃取”を「セチシュ」とはかなり発音しづらいですが、“窃盗”は「セチトウ」、“剽窃” は「ヒョウセチ」であればそこまでではないので これを用いることも考えられます。
発音時の工夫として「セチシュ」は「セチッシュ」のように軽く促音を挟むと読みやすくなります。