「コウリョウ」と読むことのできる漢字熟語は非常に多くありますが、ほとんど使うことのないものもあります。
- 公領 綱領 稿料 香料 荒涼 光量 広量 衡量 考量 好良 校了 皇陵 江陵 広陵 弘陵 後梁
形容動詞“荒涼”と“好良” は前の字と後ろの字が並列の関係になり、文字の前後を入れ替えても意味に大差ありません。他は修飾、または動作対象を指しているので入れ替えは効きません。
“広陵” “弘陵” は それぞれ奈良と兵庫の地名や固有名詞であるので読み替えの必要性は希薄です。”江陵” は中国なのでそもそも無理に日本読みを当てる必要はありません(チアンリンとの呼称があります)。“後梁” も昔の中国の王朝名ですが わざわざ日本語をあてる必要はありません。
“皇陵” は 天皇の墳墓をさす陵を言い、またの名を「みささぎ」と言いますが、用途が限定されているので 誤解を無くす意味では “天皇陵“(テンノウリョウ)と呼ぶのが良いでしょう。(「オウリョウ」などの読み替えは別の語があって うまく機能しません)
ここでは 香料 綱領 光量 荒涼 公領 校了 稿料 の7つについて考えます。
まず「リョウ」の方をみると内容や材料を表す料
、分量をいう 量
、領地をいう領
あたりがメインになります。陵
は おか の意味ですが、地名は固有名詞であるので本来の読みとは関係なく発音しますから、ここでは重視しません。
「コウ」は日本語での体系では「コウ」ですが、細かく見ると「カウ」「クヮウ」「クァン」「カン」「キョウ」「カオ」「ケウ」「ホウ」「ハウ」「ゴウ」「ガウ」などいくつもの音に分けられます。
「リョウ」には「リャオ」「ラオ」「リオ」「レオ」「リウ」「レウ」「ラウ」「レフ」「リャン」「ラ」などが あります。
料
と量
は明確に分けたほうが都合が良いでしょう。“利用量” “利用料”、“通信量” “通信料” など、同じ名詞にくっついて接尾語として働くため問題を起こしやすいためです。
量
は「数量」、料
は「料金」と言い換えれば だいたいのケースでは通用しますが、水道や電気やデータ通信のように目で見て数えられないものは言い換えは難しいです。「分量」「容量」「度量」など何か文字を追加したり、口語では量
の代わりにGB(ギガ)とかL(リットル)など直接単位を使う方法も考えられますが、入力だと文字種の切り替えが面倒です。
量
は下に里
が あり部首もそれですが、これは重
と日
から成る会意字です。「リョウ」の音は里
と直接は関係ありません。この字は普通話だと「リャン」(liang4) になっています。
料
は呉音漢音ともに「リョウ」、旧仮名遣いだと「レウ」になります。また普通話では量
とは違い「リャオ」(liao)のような発音になります。「リャオ」でも十分発音は可能ですが、入力のしやすさを考えると旧仮名との間の「レオ」が便利です。この読みはライオンを表す語としてカタカナ語でよく使われます。
“稿料” に関しては かわりに “原稿料” や “出稿料“ などに字を足すほうが正確で速い可能性がありますが、“出稿”と“出港”と”出向”など稿
単独で割合よく衝突を起こしうる字です。
稿
の字は、旁に高
を持つ形声字で、「コウ」としか読めません。普通話拼音では gao3となり「ガオ」のように発音します。高
もgao3です。
“校了” とは文章の校正を完了することを指す略語のような言葉ですが、出版やデザインの世界では よく登場する言葉です。
了
の字は呉音漢音ともに「リョウ」ですが、現代中国普通話だと「リャオ」(liao)のようになり、また “完了”とか“来了” など中国語の助詞として使用され、このときは「ラ」(le)のような発音になります。麻雀でアガリを和了と呼んだりもするので、好きな人は知っている読み方でしょう。
領
の字は呉音で「リョウ」と読み、この読みでしか熟語がないですが、偏に令
があり、これは「レイ」の音を持つため同じ漢音があるとされます。普通話だと鈴
と同じ「リン」です。
“荒涼” は特殊で、形容動詞ですが「荒涼だ」とはあまり使われず、「荒涼とした」の文型で現れます。しかし「香料とした」「校了とした」など結局のところ衝突します。
荒
の字は草冠⾋
が巟
の音を借りた形声字で、どちらも あれた様子を指し同じ発音をします。中国普通話では「フワン」(huang)で、「コウ」とは読みません(拼音のhはクとフの間のような無声軟口蓋摩擦音で 強いて書けばㇰファンとでもなりますが、ほぼ聞き取れません)。さらに亡
は象形文字兦
の別形で 折れた刃を意味し、音はwang、川
がchuanなので、「コウ」の音の根拠は辿れません。その意味では 中国読みに寄せるか、旧仮名遣いに寄せるか、それでなければ使いやすければなんでも良いとも言えます。
涼
の字は漢音で「リョウ」、中国普通話だと「リャン」(liang)となり、川のほとりの高丘の上の建物を指す会意字で、京
の部を持つ他の字とは音は共通しません。
よって「荒涼」は消去法的に近い音をどれか選べばよく、日本語の漢字の読みとしては衝突がない「ファン」と「リョン」「リャン」あたりの組み合わせは比較的良い候補になります。fanryonならローマ字入力も難しくありません。
現状の日本語でも すでにそうですが、リャ(リァ)・リュ(リゥ)・リョ(リォ)はよく登場するのに普通に入力するのは少し面倒です。これをローマ字入力で、LをRYの略として扱えるならla li lu le loで済むので 楽になります。ちょうどF+Aが「ファ」、J+Aが「ジャ」になるように、ソフトウェアの調整の余地はあるでしょう。