“機会” と “機械” は 機
の字が共通しているため会
と械
を区別することになります。
機
の字は日本では複雑な機能を持った仕組みを表します。同時に これの簡体字表記は机
で、携帯電話やスマートフォンを “手机” と書くなど独特の進化をしています。
機
の旁であると同時に音符でもある幾
の部分は ひらがなのき
とカタカナのキ
の元になった字とされ、うかつに読みは変更できません。
会
(旧字:會
)の字は「カイ」の漢音読みですが、“一期一会”(イチゴイチエ) や“会釈”(エシャク) など、呉音では「エ」と発音されます。また古くは合拗音「クヮイ」であり、中国普通話でも同じような発音(拼音kuai4)を持ちます。(ヮ
は入力しづらいので かわりにァ
を使っても基本的には問題ありません。)
会
を「エ」として “機会” を「キエ」にすると“帰依”と同じになるので微妙なところです。帰依は動作性名詞の宗教用語のため 文脈的に同じになることは まず無いです。とはいえ初めて聞くと紛らわしいので「クァイ」と「エ」の中間にあたる「クェ」あるいはもっと単純な「ケ」を用いて「キクェ」「キケ」とすると重複はなくなります。
字幅を問わず英語でも良い局面であれば、chance(チャンス)やopportunity(オポテゥニティ)のような言い方を使うほうが伝わりやすい時もあるでしょう。
械
の字は木
に戒
(いましめ)と書きますが、常用外の訓読み「かせ」があり、元来これは人に刑罰を与える器具を表す文字であったと言います。戒
も械
も合拗音は用いず、純粋な「カイ」と読みます(漢音)。中国普通話では「シエ(xie)」のように発音されます。
「キカイ」の場面では必須ではないですが、戒
を読み替えておくと例えば “戒厳”vs“改元“(カイゲン)、“厳戒”vs“限界”(ゲンカイ) など他のところでは有効です。この部を用いる日本語の熟語は多くないので比較的 変更容易な文字です。ですのでその整合性から “機械” を「キシェ」のように書くと都合が良いです。この語も machine(マシン)の単語が日本で一般的ですので、漢字にこだわる必要がなければ それも良いでしょう。
機械と器械を区別することはあまり重要ではないですが、大まかに器
と機
では仕組みの単純なものを器
と書きます。“電子機器” や “食器洗浄機”のように両方混ざったような単語も時々あり、読み替えておくと時々便利です。
器
は呉音漢音ともに「キ」と読み、中国普通話で「チ」(qi)です。旧字で器︀
と書き、間にある字は実は大
ではなく犬
です。死んだ犬を葬ったとか、神への捧げ物にしたとか、番犬に道具を守らせたとか諸説ありますが、会意字ではありますが、音としては大
よりも犬
の「ケン」と近いところがあります。しかし「ケン」にしたところで同音語が多いのは変わらないため最適とは言えません。
1文字である点に扱いにくさがあるとすれば、ki かつ tsiであるとみなした上で合流させて「クチ」「ツキ」「チキ」「キチ」などに 逃がすことが考えられますが、口
と同じ「クチ」、盃
(さかづき)に近い「ツキ」、外観で吉
とも近いことから「キチ」などは説明がギリギリ可能な候補かと考えられます。カナの側がもう少し整理されれば「クィ(kwi)」「ツィ(tswi)」のような微妙な音を表現できるかもしれませんが、現状では入力も聞き取りもしづらいので最適とは言えません。
「チ」や「キ」で終わる単漢字は、熟語に連続すると促音化してッ
になる傾向があります。したがって「キチカイ」は「キッカイ」、「クチカイ」は「クッカイ」、「チキカイ」でも「チッカイ」になると不自然さはあまりありません。
“棋界” は囲碁将棋の世界を指しますが、その分野に疎いひとはあまり使わないでしょう。
界
の字は合拗音ではない通常の「カイ」の発音で、普通話だと「チエ」(jie4)、広東語で「カイ」です。“境界”vs“教会”などに“各階”vs“角界” などで時々衝突があります。介
の含まれた会意形声字で、この部 自体も“切開”vs“節介”、“介助”vs“解除” などに衝突があります。ゆえに「チェ」の新別音を持っておくのは有用です。
またこの介
の字は人名で「すけ」とよく読まれます。土
がついた堺
は「さかい」と読みます。このあたりの連関から サ行の存在を見出し、慣用音として界
に「サケ」「シケ」あたりの音価を与えるのも1つの案です。
(石:セキ、尺:シャク、式:シキ などの同系と考える)
棋
の字は漢音「キ」の他に、呉音で“将棋”(ショウギ)の「ギ」の読みがあり、また部の其
が“最期“(サイゴ)のように「ゴ」の音を持っており、会意形声字である棋
にも「ゴ」の読みがあるとされます。
“将棋”の「ギ」なので濁点をつけて「ギ」のほうが分かりやすいですが、とはいえ「ギカイ」だと“議会”、「ゴカイ」だと“誤解”になるのでどちらも使えません。なので やるなら「ギチェ」とか「ゴチェ」などに逃がすことになります。
口で説明するときは、このような紛らわしい語句は避け、「棋碁(ギゴ)のセカイ」とか言い換えたほうが はるかにわかりやすいでしょう。
“奇怪” に関しては 古くから「キッカイ」という区別した読みがあり、漢字変換でデフォルトで変換できるものがあります。これが一番簡単です。
ただし奇
の読みは「キ」しかないので、整合性を持たせるなら「キク」「キツ」「キチ」いずれかの音を別音として与える必要はあるでしょう。
怪
の字は古くは合拗音で「クヮイ」であり、また同時に “もののけ”の「ケ」の呉音読みも比較的知られているでしょう。合拗音であることから「クェ」の記法もあります。