“献花” “喧嘩” “鹸化” “懸架” は すべて「ケンカする」と 言うことのできる 動作性名詞です。
一般語句としては “喧嘩”またはカナ表記の「けんか」が もっとも多く用ちいられます。その次が “献花” が多く、“鹸化” “懸架” は 専門的で あまり登場頻度は高くありません。
“献花” は 花を献るという行為を指し、この「たてまつる」は神仏や死者の霊魂などに対して何かをささげることを言います。献(旧字体:獻) は、左の偏は 台に乗せた古代の鍋釜を表わし、供物を奉献する様を表わしたものです。犬は獣を示し、犭(けものへん)と同じですので、犬に限らず猪 猫 猿 狐 狸なども含まれるかもしれません。
花という字は華で代用される場合もありますが、“献花” も “献華” と書くことができます。これは 読みが異なりますが “献華祭”(ケンゲサイ) など伝統行事の名称などで用いられます。通常花は個体であるのに対し、華は形が抽象的です。 華という字は花に比較して、“華やか” など 美しく優れたさまを言うときに使われ、人の不幸などを悼むときにはあまり適しません。
この華は中国簡体字だと华と書き、艹(草かんむり) が無いですが、上部は化です。この化に艹をつければ花、十が付けば华ですから、互いに深い関係にあると考えられます。
“喧嘩”という熟語に含まれる嘩は、華に口が ついたもので、この簡体字も哗と書きます。そして、“鹸化” の 化も含まれているということです。
花 華 嘩 は、いずれも中国普通話での発音は 「ファー」あるいは「ホヮー」(hua) で、声調はだけ異なる関係です。つまり、“喧嘩” と “献花” は 用途は全く違いますが、後ろの字は互いに関係があります。
“喧嘩” という熟語を構成する喧と嘩は どちらも「かまびすしい」と読む字です。口論がうるさいという意味であって、文字に手足を出す意味合いはありません。その場合は喧嘩というより “拳科”・“拳過” とでも書いたほうが良いかもしれません。しかしどうあれ カナの「ケンカ」がすでに流通している以上、これをいじっても直接解決に効果は薄く、それ以外の単語に 別の読みがあったほうがよいでしょう。
花とその部の化は「ケ」の読みがあり、“变化”(ヘンゲ)、“権化”(ゴンゲ) など「ン」に続くと「ゲ」が現われます。同様に “献花” も「ケンゲ」と読むことはできます。しかし嘩や華も “蓮華”(レンゲ) など「ゲ」が使われる例があります。どれも 旧来「クヮ」の音を持つ合拗音でもあるので、それやその濁音を使うこともできます。
喧は 宣の字を含む形声字です。この2つの字は、中国普通話では ともに「シュァン」(xuan) であり、音の差がない形となっています。喧は、他には “喧騒”(ケンソウ)、“喧々囂々”(ケンケンゴウゴウ)、“喧々諤々”(ケンケンガクガク) が ある程度で、一般的な熟語の数がかなり少ない字です。宣が「セン」で あるならこちらも合わせても良いのではないかともいえますが、“喧嘩” では「センカ」となってしまい、使いみちも少ないので あまり有効ではありません。
献には “献立”(コンダテ) の「コン」の読みもあります。この読み方は食べ物に関してしか使われず、たてまつるという意味からは遠くなります。普通話では「シェン」(xian4) であるので、これを使うこともできますが、どっちがふさわしいかは微妙なところです。犬が付いている以上は、あまり「ケン」から 遠ざけるのが良いとも言えません。
“懸架” という語は “懸ける”と“架ける” ともに「カける」と訓読可能な漢字2字からなり、橋を架すとか、自動車の車軸懸架などに用いる単語です。
架は加を含みますが、この字はカタカナのカの元になった字でもあり、これと遠ざけてしまうのも歴史的損失とも見えます。ゆえに架は ひとまずそのままで考えます。
懸は「ケン」のほか、“懸念”(ケネン) の「ケ」の読みもあります。左上が県を含むので「ケン」の読みのほうがわかりやすいですが、右は系「ケイ」です。県は縣の新字体であるので、これも本当は同じです。「ケイカ」では “経過” があるので問題がありますが、「ケカ」なら ひとまず回避可能です。
この単語に関しては訓読みとしても短いので、「カけカ」とすることも考えられます。わかりやすさで言うとこちらのほうが有効な可能性があります。
鹸は、“石鹸”(セッケン) の「ケン」ですが、この字には同じ部を持つ形声字に検 倹 剣 また 異体字の鹼に対しては瞼があります。鹸そのものには熟語は多くないですが、残りの字には非常に多くの熟語があります。日本語には「ケン」以外の読みは無く、中国語の読みを頼れば「ジァン」(jian) など使えますが、これは少々遠すぎます。間を取るなら「キャン」とか「ギャン」とか考えられますが、それでもかなり難しいでしょう。