“依存” という単語は濁点付きの「イゾン」と濁点無しの「イソン」の両方の読み方があります。
存
の字は 存在(ソンザイ)の「ソン」ですが 保存(ホゾン)や既存(キゾン)など語末に来ると「ゾン」と読むことが多くなります。存
の呉音は「ゾン」、漢音は「ソン」と読みます。
「ゾン」の特異な用法として “存じます” と書いて「ぞんじます」と読み、「思います」の謙譲語とすることができます。“異存” の存
はこの意味で、相手と違う意見があるという意味です。
漢字には同じ文字を意味によって読み替えるものがあり、“依存” と “異存” の存
にもこれが適用されそうに見えますが、この字はそういうものではなく、中国語の普通話拼音でも「ツォン↗︎」(cun2)しか ありません。
“所存です” や “異存ありません” は 思いがある、意見の相違はないという意味合いで どちらも謙譲語ではありますが、あまりに定型的であるため “存(ぞん)” が謙譲語という認識のない人もいます。「思っております」や「おっしゃる通りです」あたりで代用するほうが誤解なく伝わります。
したがってここでは 「ゾン」でも「ソン」でもどちらでも良いという事にはなりますが、この字の読み方で “依存”と“異存”を 区別するのは 年代によって理解が異なるため難しいものがあります。
漢字自体が違う 異
と依
で区別する方が見た目にも分かりやすいのでこちらのアプローチを取ります。
異
は通常「イ」としか読めず、古くはヤ行イ(yi)の音を持つといいます。yearとearの差のようなもので、無理やりカナで書くと「ユィ」とすることができますが、入力には良くても聞き取りは難しいです。
これに対して依
の方は、“帰依”(キエ)などの語で使われる呉音の「エ」の音があります。この依
を構成する旁の衣
の字は、ひらがなのえ
の字のもとになった字であり、日本語としてはその読み方の方が伝統的です。
したがって “依存” は「エゾン」または「エソン」とするのが順当であると言えます。
別解としては依
の字は訓読みで「より」と読むことができます。これを用いて「よりそん」のようにすることもできます。字数が増えて文字入力では扱いにくくなりますが、耳で聴いた場合は この読み方の方が当面は理解されやすいでしょう。