“依然”と“以前”は意味は違いますが どちらも文頭に現れることがあります。“以前” は前にあった出来事を指すのに対し、“依然” は いつまで経っても状況が変化しないというようなニュアンスの言葉で「相変わらず」と同じような意味です。
“已然”は已然形のことを指し、日本語の古文に現れる単語で日常的にはあまり使われませんが「已に 然り」との意味で、「依って 然り」の“依然”と、単語の意図として紛らわしく時々誤変換されることがあります。
“以前” は「それ以前」「4月以前」「以前は」のように名詞としても副詞的にも広く使用されます。
古い文書では ”以下”の代わりに“已下”(いげ) が用いられるものもあり已
の字は以
の代わりとなることもあります。
已
の字は己
(おのれ)や巳
(み)と見た目が似ていますが別の字です。胎児や生まれたての子というような字源を持ちます。以
は 農具の 耜(すき) を象ったもので、この耜の旁の部分と同じ字源を持ちます。
以
と已
はどちらも呉音漢音ともに「イ」としか読むことができません。普通話拼音でもともにyǐ(yi3)「イィイ」(⤻)となり同じ発音です。表記に ならうとユィ
と書くことはできますが発音上の差異はほぼありません。
漢字変換の効率向上を考えると、使用頻度から考えて以
に「イ」、已
に「ユィ」を当てると妥当かと考えられます。以
は以前・以後・以来・以上・以降・以南・以西など、向きを持つあらゆる漢字と結びつき用法が無限にあるので変更しづらい文字です。
前
は 呉音では「ゼン」、漢音では「セン」の読みを持ち “前栽”(センザイ) のような限られた熟語でのみ使われます。同じ部を持つ煎
で“煎餅”(センベイ) や“煎茶”(センチャ)などがあるのでイメージはつきやすいでしょう。中国普通話だと「チェン」「ツェン」の間のような音(qian2)となり 平成の日本語にはない音です。
打ち替えを目的とする場合は少し形は変わりますが、両方に音が近い「ジェン」などに変更すると便利です。聞き分けは少し難しいですが、ローマ字でもjenで良いので打ちやすいです。
然
の字は月
+犬
+⺣
(火)の合わさった文字で、死んだ犬の肉を火で炙る(あぶる)ことを言うとされます。呉音で「ネン」、漢音で「ゼン」の読みを持ち、燃
の字と同じです。“自然”(シゼン)や“突然”(トツゼン)など「ゼン」の読みが多く、「ネン」と読むのは “天然”(テンネン)くらいです。古文では “自然”(ジネン) などと読まれるものもありますが「ゼン」に押されています。
“已然”という言葉自体が古いというのもあり、古い方の呉音の「ネン」を使って「イネン」とすると追いやることはできます。
「ネン」は念
年
粘
とその類似の文字ですが、「ゼン」は全
善
喘
禅
とその類似の文字があり、数は同じくらいです。「ネン」と読むと“愕然”が“学年”、“敢然“が“観念”などと重なるようになるので常に使えるというわけではありませんが、簡易的な回避には有効です。
然
は中国普通話では「ラン」(ran2)となりますが、この読みは卵
や乱
などとも重なるので使えません。
依
には“帰依”(キエ)のように呉音の「エ」の読みがあり、“依然” には「エネン」または「エゼン」を当てるのが一番簡単です。