世界には、およそ現在6000を超える言語があるとされます。
しかしその半数近くは消滅の危機に瀕している(Endangered language)と言われます。
半数というのは、話者が100万人を超えている言語は100年は生き延びるという研究に基づきます。
それを下回ると、知っていても使う機会が少なくなったり、経済的に自立するために多言語の力を借りなくてはならないなど何らかの損失を伴うようになるためです。
この推定は、あくまで過去の実績に基づいています。
デジタル化、特にインターネットで誰でも他言語の情報が簡単に入手可能になった現代と未来では、前提条件が異なっている以上実績通りに進むかどうかは わかりません。
他言語の映像も安く簡単に入手でき、その影響を受けやすく、感化されやすくなっています。
外国の言葉を学べば自分の作品をより多くの相手に見せたり聞かせたりしやすくなりますが、インターネットを使うとその効果は格段に大きなものになります。
でももしかすると、もっと ゆっくりに なるかもしれません。誰でも簡単に音声を録音し、保存し、配信が可能だからです。
各地で失われそうな言語を保存しようという動きも進んでおり、必要な機材が安くなったので遺しやすくもなっています。
翻訳システムも進んでいるため他言語の知識がなくとも ある程度の知識を得たりしやすくなったとも言えるからです。
良い方にも悪い方にもどちらにも影響される可能性があるのです。
しかしそれでも、マイナー言語を学習する意味が見出せず離れていく人がいるのも事実です。学習時間というものは無限にあるわけではありません。
限られた時間で学ぶなら、話者の人数・地域規模が大きい言語を選ぶ方が、ビジネスにも趣味にも幅が広まります。
日本の消滅危機言語
日本で代表的な消滅危機言語はアイヌ語で、「極めて深刻」と位置付けられています。
沖縄や南の島々の八重山、宮古島、離島の言語の多くもそれに準じ、話者の減少が進んでいます。
文化庁 – 消滅の危機にある言語・方言
https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kokugo_shisaku/kikigengo/
このリストに挙げられているものは、文法としても標準日本語とは異なる特徴的な体系をいくつか持ちあわせています。
文法レベルでの差異は会話の不便を生じてしまいやすいというのもあるかもしれません。
アイヌ語のいくつかは北海道の地名、沖縄にしても地名や人名などにその名残がありますが、それら固有名詞は存在しても相互運用上大きな障害となりませんから、今後も当分は消えないでしょう。
一方で同一の意味を持つものの存続はなかなか厳しいものがあります。
たとえば沖縄には「美ら海水族館」という水族館がありますが、このちゅら
とは標準語の「美しい」やあるいは「清らかな」に該当します。このように固有名詞化されたものは その名を留めることはできますが、しかし日常会話や文中でいきなり ちゅら と言われても他地域の人では理解に困ります。〜な
の形を取らないと形容詞かどうかもわからないのです。生活圏の狭い高齢者など一部を除き、結局「美しい」が優勢になってしまいます。
同じような現象は全国でも同様で、リストに上がってはいないものの着実に絶滅が危惧される単語はもっと無数にあるはずです。
以下に、無作為に50音から単語を並べてみます。
特定の地域でしか使われない方言、地方により意味が異なるもの、古語など見分けがつくでしょうか。
- あんばい
- いちびる
- うだつ
- えずく
- おんどれ
- かみさん
- きばる
- くぐもる
- けっぱる
- こそばい
- さらぴん
- しばれる
- ずらかる
- せこい
- そぞろ
- たかる
- ちょろまかす
- つんのめる
- でっちあげる
- とらまえる
- なおす
- にべもなく
- ぬくい
- ねまき
- のさばる
- ぱっち
- ひんしゅく
- ふだつき
- べらぼうめ
- ほたえる
- まんざら
- みなぎる
- むせぶ
- めかた
- ももひき
- ややこしい
- ゆかしき
- ようさん
- らっかさん
- りこうな
- ルンペン
- レッテル
- ろくでなし
- わんぱく